924話 天使を無闇にいじめてはいけません!


『えっ?日曜俺ら真面目に教会行ってるのに何やってるの?』

『じゃあ聞くけど、ミカエル、ガブリエル、次は?』

『ラファエル』

『ラファエル』

『ラファエル(躊躇いなく)』

『俺ずっと四大天使の四番目はアウリエルだと思ってた』

『ほら、私いなくても良いじゃん』

『…………なんか、ゴメン』

『どれだけ頑張っても勝手に堕天した扱い受けたりするからね。書物にも名前出てこないし、ラファエルだってそうなんだけどなぁ…』

『ごめんて!マジごめんなさい!』

『神様や天使の名前なんて知らんし。文句は聖典作った人にどうぞ』

 うん。コメント欄を荒らさないで欲しいなぁ…


 のんびりおしゃべりをしていると扉がノックされ、早めに人を入場させるとの連絡があった。

 開始まであと2時間。

 配信を終えてちょっと考える。

 犯罪などは起きないと思うけど、”だろう”で動くのは事故の元。念のためにこの会場内を聖域にしておいて邪心を起こしにくくしておこう。

「犯罪抑制効果も期待できるって便利だなぁ…聖域」

「いや、その使い方は絶対におかしいから」

 佑那がお手玉しながらツッコミを入れてきた。

「邪心抑制って事は覚悟を決めてやらかそうとしている人以外は抑制できそうだよね?あと、憑依関係の相手も抑制可能だし」

「まあ、そうだけど…兄さんの聖域は本当にその程度でおさまるの?」

 思いっきりジト目で見てくる佑那に僕は首をかしげる。

「えっ?わかんない。でも設定は誰でも入れるけど通常聖域のように邪心抑制と浄化にしているよ?」

「何その技術の無駄遣い…流石神様」

 僕を神様扱いしないで?



 SIDE:会場内


 会場入りした人々の中で違和感を覚えた者は病人とお年寄りだった。

「体が、軽くなった?」

「貴方もですか?私は呼吸が凄く楽になったのですよ」

 にこやかに話す初対面の老人2人。

 その横では目を見開いたまま自身の手を見つめる男が居た。

「う、そ…っ、えっ?は?何で、ははっ、解けてる。俺に掛けられてた呪い、解けてる!」

 ボロボロとこぼれ落ちる涙を堪えること無く男が叫ぶ。

 しかし会場内でそれを咎める者は居なかった。

 それはそこまで多くは無いがそこそこそういった者がいたために。

 と、そこに場内アナウンスが流れる。


『ただ今、巫女様が会場内に聖域を展開しております。神様方のご来場もあるため、通常の聖域よりも何らかの好条件となる可能性もございます。また、神様方への不敬は慎んで頂くよう宜しくお願い致します』


 その場に居た全員が何となく察した。

 ああ、巫女様がやらかして神様方に引火した結果がこれか、と。

「ライブが始まる前からこんなサプライズですか…やはり巫女様は凄いですな」

「いやいや…ははは、流石巫女様ですな」

「如何なされました?」

「いえ、実は少し前にダンジョンでちょっとしたことがありましてね…左目があまり見えなくなっていたのですが、今ハッキリと見えるのですよ」

「それは…おめでとうございます。今夜は祝杯ですな!あの食堂で」

「ライブが終わったらあの食堂で乾杯と行きますか」

「大使館の仲間達も含め巫女様のライブ記念パーティーという名目で2カ国大使館職員の懇談会を行いますか」

「…そうですな。職員への労いも必要ですな!何よりあの食堂はお得だ」

「「ははははは!」」

 自国のお偉いさん方が来日しているはずなのにそれを無視して祝いの席を設けようとしている自由人な大使達が現れるというカオスな会場となっていた。


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