761話 隙あらば兄者語り


 怒濤のお夕飯ラッシュが終わりのんびりと一息。

「───兄さん兄さん。その異世界笹の側に植えている物って、紫蘇?」

「紫蘇に見えるが茶だ」

「…はい?」

 またそのパターン?

「赤しそっぽいのは紅茶、ダージリンフレーバーだ。青じそは緑茶だ。分かりやすいだろ」

「分かりやすいけど、緑茶の種類は?」

「狭山」

「毎日使うよ!」


 一応鑑定しておこうかな。


【名も無き植物462213】Ex(絶滅種):上位世界の不倒岸壁に群生する紫色の植物A

 傷や火傷のエクター(現地語で根源ダメージの意)を無効化する。

 Lv5火傷ダメージ因果消滅、Lv5裂傷・刀傷・刺傷・咬傷ダメージ因果消滅

 またそれらに付随される呪詛等に関しても因果消滅のため無効となる。

 備考:華やかさと渋みのバランスが絶妙です。そのままポットに入れてお湯を注ぐのも良いですが、出来れば軽く千切って乾燥させてください。手間をかけた分一番摘みの風味がでます。


「兄さん。この赤紫蘇とんでもない代物なんだけど?」

「だろうな。これを手に入れるために毎年数万人の踏破者や神人が消滅している位だからな」

「待って!?命を落とす、ではなく消滅なの!?」

「ああ。これが生えている不倒の断崖という所は別名死練の断崖と呼ばれていてな、スキルや権能は全部使用不可。素の力も最低値まで下げられるし道具類も原始的なものを3つまでだ」

「ほぼ無理ゲー?」

「まあな。そんな中別の世界のお嬢様が興味本位でそこへ行ってしまってな」

「え」

「護衛は全員消滅。お嬢様一人が取り残されて戻る事すら出来ない状態…と言う所で俺が出動する羽目になった」

「兄さん。断ることも大切だよ?まあ、人助けは大切だし出来ると思ったから行ったんだろうけど」

「ああ。だから背負子とグラップリングフックとロープを持って救出に行ってお嬢様を背負子に乗せて一度頂上へ行き、管理者へ挨拶をしたときに渡されたのがこの2つの植物だ」

 トンデモナイモノだった!?

「その後はお嬢を先に下ろしてあとは俺が一気に降りたと言うだけだが…青紫蘇の方も鑑定したか?」

「まだ」


【名も無き植物462215】Ex(絶滅種):上位世界の不倒岸壁に群生する緑色の植物A

 心身に不都合なのエクター(現地語で根源ダメージの意)を無効化する。

 僅かながら生命力補充を行う。

 Lv5術由来因果消滅、Lv5病由来ダメージ因果消滅

 生命力補充作用により通常1~5年、最大35年延長される。

 備考:コクと香りのバランスが絶妙な一品。数十年に一度だけ僅かに出回る程度の稀少品です。巫女神様に癒しあれ。


「……なんかおすすめされた」

「おすすめされた?」

「うん。巫女神様に癒しあれって」

「…お前神々まで信者増やしてどうするんだよ…」

 いやいやそんな事言われても…

「コクと香りのバランスが絶妙とか、数十年に一度だけ僅かに出回るって」

「らしいな。これだけ得られることはないらしい」

「なんでもらえたの?」

「純粋に人命救助としっかりと挨拶をしたからだな。山の礼儀だろ?登る際と頂上での感謝は。まあ、降りたあとでも感謝はしたが」

「……兄さんそう言う所本当に律儀だよね」

 兄さんはやっぱり兄さんだ。


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