703話 NO FUTURE

 SIDE:世界と配信


 それはとある小国だった。

「偽神の横暴を許すな」

 そう国のトップが叫び国権を使い軍を神国へ派遣した。

 ミサイル艇や軽空母に兵を乗せ、占拠するため。

 更には戦闘機や攻撃ヘリを出撃させ、一気に制圧しようと言う魂胆だった。


「一生懸命哀れだねぇ」

 ユグドラシルが呟く。

 巨大なスクリーンには戦闘機や武装ヘリ高速艇など武装した者達が神国ここへ向かっている姿を映し出している。

「さてどうしよう?」


『殲・滅☆』

『何処の国やねん!』

『少し古めの武器が多い感じか?』

『こちらから攻撃はどうでしょう』

『軍部のみを全滅させるとか?』

『トップが倒されるまで神敵とするとかいかがですか?』


 コメント欄は攻撃的なものが多かった。

 ユグドラシルは「ふぅん」と小さく呟き、

「どうぞご自由に。入ってこれないだろうし…ただ、喧嘩を売ったわけだから神敵確定だし、人の法でどうこうできない。そこは分かっていてやっているんだろうね」

 ユグドラシルの目は何処までも冷たかった。

「まずは手始めに、農作物と鉱物を枯渇させるね。次いで職業能力値を半減にして、スキル効果も半減。軍人はカルマは最高で10にしておこうかな。

 あとは審議の石板を撤去するね。ステータスやカルマ値は例え国が滅んでも国民が国籍を変えても元には戻らないからそのつもりで」

 口元に柔和な笑みを浮かべ、ユグドラシルは告げる。

「モラトリアムはもう過ぎたんだよ?その事は以前も語ったと思うけどね」

 深い深いため息を吐き、ユグドラシルは無表情でカメラを見る。

「国の長の愚かな行いで数百万の民が無残にも死ぬ。

 君達は忘れたのかい?私とミツルギ神は神々を保護することを第一としている。

 ゆーちゃんにお願いされて人を助けているに過ぎなかった。この世界の神々はこれまでの人の愚かなやりとりに愛想が尽きている…そんな中蔑ろにする発言をし、挑発行為を行うんだから…ねぇ?」

 コメント欄は完全に止まった。



 SIDE:友紀


「えっ?早速攻めてくる国があったの?」

『はい。こちらは無視する方向でと決定しておりますが、ユグドラシル様が『神として』制裁を科すと』

 少し暗い表情で報告に来たリムネーに僕は「仕方ないよ」と答えた。

「…えっ?」

「国民全てを犠牲にしても欲しかったんだろうね。神様の力を知っているはずなのに、自分の国の軍事力を知っているはずなのに…それでも攻め込むんだから余程の理由があるんだよ」

『ですが』

「周りの人含め止めようと思えば止められたと思うんだ。ゆる姉様のことだから憑依判定や洗脳判定はしていると思うよ?

 自分の意思で、自分たちの意思で神々に弓を引いた。多分ゆる姉様は待っていると思うよ?そんな愚かなトップが打倒されるのを…ただ、時間は神国が攻撃されるまでだと思うけど」

 泣きそうな顔のリムネーを抱きしめる。

「その心は忘れないで。その想いは忘れないで。でも、可哀相と思うだけでは無くどうすれば良いのか、どうしたらよかったのか常に考えて」

『…はい』

「それと、無理でなければ大局を見て。そこは廣瀬さんが得意かも知れないけど…学ぶことを忘れず、初心を忘れないで」

『はい!』

 僕はリムネーに押しつけている。でも、そうしなければならない。

 リムネーのためにも、僕のためにも、世界のためにも…


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