530話 変わりゆく世界と、変わりつつある朝。
兄さん宛に電話が入った。
それは磯部さんかららしく、兄さんは少し眉をひそめていた。
「はい。岩さk───」
『スマン!緊急で中級以上のポーションを融通してくれないか!?総理が襲撃され意識不明だ!右腕が吹き飛んでいる!』
「…今上級ポーションを2つそっちのプライベートボックスに送った。2人とも使ってくれ」
『…すまない。金はあとで払う』
通話が切れた。
「らしいぞ?」
いや兄さん!?「らしいぞ?」じゃなくて!なんでそんなに平常運転なの!?
「こちらからこれ以上何かする必要は無い。即死でないのなら7割は大丈夫だ」
そう言って僕の頭を撫でる。
「俺等はこの件については触れない方が良い。恐らくは触れるように仕向けられるだろうが、関係はできる限り避けろ」
「どういう事?」
「あまりにもタイミングが良すぎるんだよ。だから明日この件で突撃してくる連中が居るはずだ」
「その人達が疑わしいと?」
「流石にそこまで単純な連中ではないとは思う、が…何か仕掛けてくるだろうな」
兄さんはそう言って好戦的な笑みを浮かべる。
「これ以上俺等に喧嘩を売った場合どうなるか…分かって貰おうじゃないか」
……兄さん。その顔は悪役がするような顔です…
翌日───
朝食を作り、神様方へお出ししてさあ出勤!…とはならなかった。
「岩崎。マンションの外と協会入り口で報道陣が張り込んでいるらしい」
「姫様、遅番の方々からも来るのは危険だと連絡が来ております」
課長と巽さんが神域から出てきた僕に開口一番そう言った。
「おはようございます課長、巽さん。では課長と巽さんは先に協会へお願いします。僕は後からそっと行きます」
タイムさんに頼んで空間転移を使っての出勤です。
「…そうだな。では、先に報道陣を蹴散らしておこう」
「姫様、今日は朝から緊急ミーティングですのでお早めにお願い致します」
2人はそう言ってマンションを出る。
「タイムさん、お願い出来る?」
「了解ッス」
「本当に面倒なことになっているわね…マンションの外、人だらけよ」
フィラさんが嫌そうに呟く。
これが真実を知りたい人なのか、それともただの野次馬なのか…
小さくため息を吐く。
目の前でゲートが開く。
お仕事しますかぁ…いや、まともに仕事出来るのかな?
僕は不安を抱えながらゲートを潜る。
タイムさんは気を使って会議室にゲートを開いたようだ。
会議室から出てタイムカードをタッチして一息吐く。
「なんか、朝から疲れちゃうなぁ…」
ため息を吐きながらブースへと向かう。
と、そこでは何やら言い争いをしている人達がいた。
西脇さんと───カウンター業務の主任さんだった。
できるだけ気配を消して自分の席へと向かう。
「岩崎さんが5分だけ質疑応答に応えれば奴等は帰るって言ってるんですよ!?」
「本当にそう思ってるの?約束を反故にするのが連中の常套手段でしょ!今だって質疑応答って事は関係ないことまで聞き出そうとしているって事よ?
昨日の騒ぎであぶれた連中がこれ幸いに色々聞こうとしているの!マンション前まで報道陣で溢れているって聞いたからガチの嫌がらせよ?」
「しかしこれだと業務が───」
「岩崎をあんな連中の前には出さない。これは決定事項だ」
「今朝早くに急患と偽ってダンジョンからここに運ばれた記者がいたくらいですよ?引き継ぎはしていますか?」
課長と巽さんが到着したようだ。
「その事を私が大々的にクレーム入れてこよう」
課長がそう言い、カウンターの方へと向かって行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます