151話 宗教~勝手に知らない宗教の巫女に祭り上げられていた件

 とりあえず会議室使用申請を出して中に入る。

 と、中で課長が眠っていた。

「岩崎か。どうした?」

[少し会議室を使おうと思いまして…]

「何かあったのか?」

[はい。今協会の前に大勢の人が…]

「んん?大勢の人がどうした」

[どうも僕の事を巫女様と言って突撃してきたみたいです…]

「ファンか?」

[いや僕にファンは…]

「姫様のファンは数千万人規模ですが?」

「そうねぇ…信者は4%かしら」

[桁違いに多い!?]

「何だ、二人とも来たという事は…重大なことか?」

 課長が真剣な表情になる。

[あ、はい。これ課長に。あと、仲間外れは駄目ですから西脇さんにも]

「「………」」

 おにぎりを受け取った二人はもの凄く神妙な顔で僕を見た。

「これは…神饌から?」

[はい]

 血相を変える西脇さんに早く食べるように勧める。

 僕の分は…確保した和菓子があるのです!


 ~~しばしご飯時間~~


「───色々話の腰がバッキバキに折れましたが…」

 咳払いをした西脇さんが言葉を続ける。

「これは確定情報です。とある新興宗教の教祖が巫女、つまり岩崎君は自分たちの巫女であると発表したようなんです」

「は?」

「…未確定情報でしたが、本格的に宣言したと」

 唖然とした表情の課長とは対照的に一応情報は掴んでいたのか巽さんは西脇さんに確認を取る。

「ええ。宗教法人千年大宮。名前と教義の一致しないトンデモ宗教で大陸系の宗教形態です」

「……意味が分からんぞ」

「およそ50年ほど前に初代教祖が三宗教を混ぜた世界観を設定し、自身こそが神からこの世界を託された救世主だと高らかに宣言したオレ様教で、現在信者3万人ほど居ます」

「オレ様教」

「オレ様教」

 課長と巽さんが同時にツボった。

[でもそんな宗教によく3万人も入信しますね…]

「実業家でもあってね…街一つを自身のグループ企業で固めて箱庭を作ったんだよ」

[それは……]

「初代教祖は御年73歳。まだご存命だが、現在2代目がこの発言をした」

[じゃあ、外にいた人達は…]

「ミーハーなファンとガチファンと信心深い人と、その教団関係者」

 何というカオス!

「しかし岩崎に喧嘩を売るとは…ある意味凄いな」

「姫様を下卑た目で見ているに違いありません!指示を。殲滅してきます!」

[巽さん抑えて抑えて]

「しかし、何の意図があるのやら…」

[もの凄くいやな可能性ですが、どこまでが怒るラインかの見極めを行う捨て石では?]

「「…あー」」

「なるほど。国が奴等を嗾けていると」

【ゆる:ちょっと調べたんだけど、複数の悪魔が教祖の家族に憑いているんだけど?】

[ぅええええっ!?]

「岩崎?どうかしたのか?」

[えっと、ゆる姉様から、教祖の家族には複数の悪魔が憑いていると]

「まさに悪魔の所業…」

 悪魔召喚よりも此方が危険だった件について。

「いや本当にどうするの?教祖家族は外国だし、行ったら確実に足止めをうけるぞ?」

[西脇さん。口調がさっきからブレすぎです]

「そんな事言っている状況じゃないって…」

[ゆる姉様に確認ですが、僕が全力で籠めて唱った場合、生放送なら届きますか?]

【ゆる:届くけど、少し難しいかなぁ】

[難しくても、マーカーにはなりませんか?]

【ゆる:……なるほど。でもゆーちゃんの負担が凄いよ?】

[長引くのも問題ですし、下手をするとその国が悪魔に乗っ取られるかも知れませんよね?]

【ゆる:計画を早める必要があるから、これを護衛の子に渡して(ボックスに荷物が届いています)】

[……巽さん。ゆる姉様がこれをと…]

 僕はボックスから一本の小瓶を取り出した。


【聖樹の神水】:1滴飲めば1歳若返ると言われている霊薬。

        50倍希釈で急速上級回復薬となる。一瓶50滴入り。


 思った以上に危険なものだったぁぁぁぁっ!!

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