936話 〇〇〇〇の行方は誰も知らない


 ゆる姉様が逃げたので配信を終え、2人と一緒にマンション神域へと向かった。

「お邪魔しま───した」

 パタン。

「「待って待って待って!開かない!?」」

 大山祇様と大物主様マジで何やってるんだ…特に大物主様の株が僕の中で大暴落しているんだけど?


 扉を開けるとスーツ姿のダンディーなおじさま2人が立っていた。

 そして奥には白シャツに黒いベストといったバーテンダーファッションの天之御中主様が苦笑しながらシェイカーを振っていた。

 この2人よりも様になっている挙げ句普通に伊邪那美お母さんに出してるし…

「とりあえずお二方…邪魔です」

「「はい…」」

 ショボンとして呑兵衛二柱は僕らから少し離れた。

「内装がバーになってるし…」

「これは今だけだよ。少しの間入れ替えをしているだけさ」

 カウンターの後ろの棚には高そうなお酒が大量に並んでいた。

 人にかってこいと言う前にそれから飲んでよ…

「何かあったのですか?」

「こっちに襲撃を掛けてきた馬鹿がいてね。トラップに掛かって無事お亡くなりになったよ。その余波を受けてリビングが滅茶苦茶になっていてね」

 そう言いながらもウイスキーグラスに青い箱から青いラベルのウイスキーを取り出して少量注ぐ。

「うちの愚父ですか?謙称ではなくガチの」

「彼ではなかったよ。ただ、ダンジョン側の存在なのは確かだ。もうあちらさんはここを開けることは出来ないけれど」

 天之御中主様はウイスキーをクッと一口飲む。

 カロン、と氷がグラスに当たる音が室内に響いた。

「ダンジョンの繋がりが完全に断たれているという事ですか?」

「ああ。これでここは完全な安全地帯となった。まあ、入口から普通に入ってくる可能性はあるけれどね…さて、今日初お目見えを頑張った巫女2人に飲み物を奢ってあげよう。2人ともみかんジュースと桃のジュース、どちらが良い?」

 突然話を振られ慌てる巫女にゃんこ親子。

 僕の側で話しかけたそうな顔をしているおっさん2人。

 カオスだ…滅茶苦茶カオスだ…



 伊邪那美お母さんが呑兵衛2人を撤去してしまった。

 巫女2人が視線を切った一瞬で昔懐かしい格ゲーの某武器商人?さんチックな滑走で彼等を掴み壁(洞窟のような空間が開いていた)にぶち込んだ。

 …グッバイ呑兵衛2人。あちらの食べ物を食べなければきっとなんとか…なるとイイネ!

 僕と伊邪那美お母さんに促されて2人はカウンター席に座る。

『お初にお目にかかります。私はみやと申します』

『はじめまして神たま!みぃと申しましゅ!』

「うん。本当に思ったとおりの良い心を宿している。私は天之御中主。そしてこっちが伊邪那美命だ」

『神たまのおかーたま?』

「そうですよ!私こそがこの子の母ですよ!」」

 おおぅ…なんか食い気味に伊邪那美お母さんが…

『?…おばーたま?』

「!!?」

 伊邪那美お母さん?伊邪那美お母さん!?

 なんか劇画調な顔な挙げ句背景雷が落ちている雰囲気がするんですが!?

「じゃあ私はアメおじさんと呼んでくれたまえ」

『あめおじたま』

「……うん。イイネ。実に良い」

『……あの、偉大なる二柱の神様方は一体何故この様な状態に…?』

「お二方とも、疲れているんだよ…そう、疲れてるんだよ…」

 僕の脳内では何故かとある連邦捜査局の女性捜査官が副音声で語りかけているような幻聴が聞こえていた。


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