882話 お休みだから練習するかな②
歌う、唄う、唱う。
絶望の淵にいる君へ。
1年後の自分はどうしているのかと。
5年後の自分はどうしているのかと。
10年後の自分はどうなっているのかと。
立ち止まっても良い、振り返っても良い。
ただ、座るな。
もう立ち上がれなくなるから。
振り返っても戻るな。
前にしか道はなく、道はいくつもあるのだから。
「───ふぅ」
巽さんセレクトの曲を歌ってみた。
5曲目と似ているけど違う曲。
巽さんの心情にあった曲、なのかな?
5曲目にはチャンスを求めるフレーズがあったけど、この曲にはそういったものはなくただただ淡々とあるがままを歌っている感がある。
過去も今も変わらない。だから前へ進め、前であればどんな方向でも良いんだからという内容だ。
1年後と5年後は客観的に、10年後は思い描いて。
自分のいない未来ではなく自分のいる世界を想像し歩き続けろと静かに歌う。
うん、ちょっと重い感じだけど良い歌じゃないかな?
で、
「私があの時死ななかった未来は…いえ、それだと結羽人さんに会えないし、ここにいることもない…」
「私が神託を受けず村娘であったら…きっとそれは盗賊に襲われ悲惨な目に遭う未来しか、あれ?それだとそこまで変わらないどころかマイナス修正された未来?」
人生一度クリアした組が正座して聞いているんですが?
しかもこの人たち、今の方が幸せだとか言っててもし生きていたらって全否定なんだけど!?
「…無理ですね。無理無理です。あの社畜根性と使われる者精神が根にあった私では会社を延命させ続け、ひたすら養分になっていたでしょう。
下手に経営陣が悪い方向に有能でしたので私は徹底して隠されていましたし」
「私の住む村は賊の被害もありましたし、戦火の状況次第ではあれ以上に脱走兵の賊化が進んでいたかも知れません。
神託でもそのようなことを伝えられていたのでどの道です」
「僕にそれを言ってどう返せと?」
「「お言葉を!」」
「悔いてないのであれば良いんじゃないですか?悪いことをした訳でもないですし。まあ、ジャンヌさんは指揮をし人を殺した…と言えばそうですが神の指示でもあり色々仕方のない状態だったこともありますし。お二人は良い子ですよ」
「「わーい」」
「…あの、岩崎?その2人のIQ下がりまくってないか?」
あ、課長。
「課長、何かありましたか?」
「いや選曲したものを持ってきたんだが」
「ああ、ありがとうございますメールでもメッセージでも良かったんですが」
「近くにいる訳だからな」
課長から印刷された紙を受け取る。
あー…甘く優しくよしよし頑張ったねと褒める歌。
課長、疲れているんだなぁ…
「ちょっと待ってくださいね?」
曲を聴いてみる。
なるほどなるほど?
「課長、これ僕が歌います?それとも“私”で歌います?」
「元の岩崎で」
即答だった。
うーーーーーーーーーーん。
これ、女性として優しく蕩けさせるように歌う感じだから女性歌手向けだと思うんだけど…いや、兄さんも歌えるな。
ちょっと思い出しながら歌ってみよう。
「〜〜〜〜♪〜〜、〜〜〜〜♪」
「「「……エロい」」」
いやなんで!?
「妖艶すぎてえっち過ぎません?」
「頼んだ私がいうのもなんだが、性癖捻じ曲がらないか?」
「手遅れの人はさらに重症化しますよこれ。私今「ママぁ!」って叫んで抱きつきたい衝動を必死に堪えてますし」
「「わかる」」
分かるな。聖女に「ママぁ!」って言われたら聖母扱いされるわ!
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