321話 5day AM3~武神降臨
「域外、布都怒志命」
藤岡は呼気を吐くと共に神名を呟いた。
途端に周辺一帯の空間が裏返った。
「!?」
巽が慌てるが、藤岡は焦る事なく脇構えをし、上体を僅かに下げた瞬間に
ギッ───
一瞬だった。
相手が瞬きの間も与えず藤岡の目の前に来ていた。
200mは優に離れていたにもかかわらず、何の挙動もなしに転移してきたのだ。
巽は素早く銃を取り出そうとしたが、相手は右手で藤岡を払いのけるように───
ブッッ
いつの間にか藤岡は刀を振り抜いており、目の前の敵はゆっくりと崩れ、消えた。
世界は謎の分霊が消えると同時に元に戻っていた。
「───まさかこちらにあわせて異相に放り込んでくるとは思わなかったぞ」
納刀し、息を吐く藤岡を驚愕の表情で見る巽。
「…神殺し、を…」
「アレを神と言って良いのか分からんな…少なくとも洒落にならない相手だった事は確かだが」
藤岡の台詞に巽は首をかしげる。
「神では、ない?」
「分霊と言われたんだよな?」
「はい」
「…しかし分霊にしては威圧感がなぁ…」
「えっ?」
───アレで!?神域である程度慣れてはいたと思っていましたけど、敵意の向いた威圧があそこまで厳しいものとは思っても居ませんでしたよ!?
どん引きする巽に言葉を続ける藤岡。
「異相化どころか世界が軋むからなぁ…布都怒志発動させても互角が良い所だからなぁ?」
「課長はどなたと戦ったんですか!?」
「カーリー神」
「なんで!?」
「神域に居た神が天鈿女様でな…彼女のサポートで来ていた神がカーリー神だったんだよ…」
「えええええええ?」
「これまで全身全霊で生死を賭けた戦いなんて数度しかしなかったが…あの戦いは何度死にかけたか…」
聞いて良いものなんだろうか…
「兎も角、戦闘は終了だ。戻ろうか」
「……そうですね…なんか、分霊や淀みなんて聞いて警戒していたんですが…」
「…待て。淀み?……ああ、確かそう言っていたな…」
藤岡が何か考え込む仕草をし、やがて何かに気付いたように顔を上げた。
「巽、急いで中務省に連絡を取れ!海坊主系が東京を狙う恐れありと!」
「っ!?分かりました!」
「───もし四段構えだった場合、かなり面倒な事になる…まあ、海坊主達は主力として動いてはいないと思うが…」
藤岡は車に乗り込み、息を吐く。
「さぁて、数時間後の反動が怖いぞ…あとは、武器を再調達しなければ…」
そう呟きながら目を閉じた。
SIDE:マンション
「デビューし損ねた」
「変な所で時間掛けるからだよ…」
落ち込む佑那に対し呆れた顔でため息を吐く祓戸。
「この怒りの矛先を、何に向けるか…」
「湾岸沿いに船幽霊とか海坊主が向かっているけど、それにぶつけたら?」
「海の上は流石に…」
「天馬神兵を送り込めば良いじゃないか」
「天馬…そんな便利な空中戦力が…あ、騒ぎにならないよう男性化して行きたいのですが…方法を教えてください」
「装備変更と同じ」
「ああ、おー…戦闘神官服男性…これにしよう!」
佑那はウキウキで装備変更を行い、戦闘神官服へとモードチェンジをした。
「…どう、ですか?」
「…………うん。兄者とゆうくんを足して二で割ったロンゲ」
「OK把握」
「腐女子が見たらクールな誘い受けって言いそう」
「これ以上言わないでくださいませんか!?あ、でもどうしよう…湾岸地域までの移動手段がない」
「…今、下の階の子達が車をかっ飛ばしてここに戻ろうとしているから、1時間くらいで戻ってくると思う。その時乗せて貰ったら?」
「夜通し仕事なんて…ブラックだなぁ…」
「いや緊急事態なの分かって?」
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