528話 先手、現実逃避 後手、大惨事w

「それより…大丈夫か?友紀」

「…考えることが多すぎて困ってる」

「…だよなあ…どうする?」

「お菓子作る…時間と手の掛かるお菓子を無心で作る」

 僕の台詞に兄さんは少し困ったような顔で暫く考え、

「バウムクーヘン、もしくはバームクーヘンを作るか?」

 そんな提案をしてきた。


 SIDE:結羽人


「結羽人兄さん…あんな事言うから友紀兄さん作り始めたじゃない…」

 責めるようにそう言ってくる佑那だったが、

「お前な…ヨダレを拭いてからモノを言え」

「っ…乙女としてあるまじき失態!」

「黙れ腐女子」

「兄さん限定だから!」

「喧しい」

 いや、しかし…本気で作り始めるとは思わなかった。

『あの、お兄様…お父様は何を』

『パパ凄く真剣…』

 友紀の娘達が心配そうに俺に聞いて来た。

「今友紀が作っているのはバウムクーヘンといって、ああやって少しずつ育てていくお菓子なんだ」

『『……』』

 二人は友紀をジッと見つめる。

 火の当たりを見ながら生地を形成していく友紀を二人は真剣に見つめている。

『おいしくなぁれ、おいしくなぁれ』

 マイヤがそう声を掛ける。

『美味しくなぁれ、美味しくなぁれ』

 リムネーもそう声を掛ける。

 それを聞いた友紀は振り向き、二人に微笑みかける。

「ありがとう。一緒に声を掛けようか。そうしたらきっともっと美味しくなるよ」

 友紀の台詞に二人はパァッと笑顔を見せ、友紀の側へと向かう。

「親子だよなぁ…やっぱり」

 俺はその光景を飽きること無く見続けた。


SIDE:友紀


 単純ながら奥深い。

 バウムクーヘン、作りました。

 仕上げは3パターン。プレーンとお砂糖でコーティング、チョコレートコーティングと結構頑張った。

 バウムクーヘンは伝統的な材料と製法で作ったからバームクーヘンでは無いと思う。

 心棒ををゆっくりを抜き、等分に切り分ける。

『『わぁぁ…』』

 娘2人が目をキラキラさせながらその光景を見る。

 嬉しくなっちゃうね!

 切れ端も美味しいからみんなで食べよ?

 そう思いながらも切り分け工程を経て完成。

 その場にいた全員が歓声を上げた。

「さて。それぞれ一つずつ切り分けて食べてみようか」

 僕の台詞に全員が頷く。

 兄さんは苦笑しながらも僕の行動を肯定してくれる。

 ───あれっ?

 神兵のみんなと白城さん、メリアさんまで…あれぇ?

 結局、全員で半分は消費しちゃったよ…

 で、鑑定


【箱庭バウムクーヘン】狡い:狡い!絶対美味しいもん!

 効果とかそうじゃなくて絶対食べたい食べたい食べたい!

 尊くて美味しいなんてご褒美だよね!?


 ───うん。すでに鑑定の体をを成していないんですけど!?

 ひたすら食べたいと狡いを繰り返しているだけという…

 せめて効果効能は書いて欲しかった…


 佑那。ステイ。

「そんなっ!?兄さんのバウムクーヘンを食べられないなんて拷問以上だよ!?」

 それでもステイ。

「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 えっ?そこまで!?

「兄さんはこの絶望を知らないから!」

 いやぁ…絶望て…人類の行く末を嘆いてもらってくれませんか?

 あと、バウムクーヘンは3本作ったから問題無いよね?





 聖戦勃発───


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