693話 紗・理音
30分して何とかつっかえずに弾けるようになった。
ただ、どうも妙な気がして鼻歌はしているけど歌ってはいない。
『パパ凄い!』
「………しかし、この歌詞は何処の言葉だろう」
「架空言語らしいけど、なーんか単語単位でもしっかり作られている気がするんだよねぇ…」
「…これ、文法も存在している気がするが」
「「………」」
これ、ちょっと調べないと拙いやつ?
「───よし。ちょっと確認してもらおう」
小瓶に桑の実ジャムと箱庭耐性者用の飴玉を10個程小袋に入れて添付。
ユルフテラ様へそーしん!
19分後に返信が来た。
やっぱりかなり忙しいらしい。
数日前から笑えない位忙しい状態らしいが…えっ?
「何かあったのか?」
『パパ?』
「音声化して確認したら、地球より上位世界の呪歌だったみたい。全ての守りを放棄して貴方を待っています的な歌らしいよ」
「あぁ、宣言と共に乱入するという事か」
『でもここはそんな事しても入れないよ?』
マイヤは首をかしげる。
「マンション神域なら入れるでしょ?多分箱庭のことを知らないはずだし。何よりも地球よりも上の世界の呪歌だから確実に有効だろうし」
「『あー…』」
マイヤとメリアさんが納得したような声を上げた。
「しかし、そうなるとこの楽曲は…日本語訳の方で出そうかな。曲には落とし込めそうだし」
「ふむ…」
メリアさんが納得したように頷く。
「それで騒いできたら相手に確認を取れば良い。何よりも造語で歌われても困惑する人が多数だというもっともらしい理由があるから」
『パパ歌って!』
「はいよ」
ピアノを弾く。
テンポを僅かに落とし、歌ってみる。
「夜明けの光照らす木立の~」
ゆっくりとしたテンポ、優しい歌詞。
曲に沿うように歌う。
「~ずっと、待っている。ずっと、祈ってる」
曲を終わらせ───マイヤ寝てるぅ!
あと、さっきからずっと静かに聞いていた神兵さん達もスヤァ…って…
起きているのはジャンヌさんとメリアさんのみ。
ジャンヌさんは途中から来たんですけどね!
「日本語訳だと素晴らしいのに問題言語だと…腹立たしいな」
まあ、そうですよねー
時空間の揺らぎはない。
「音階に関する術式はない、かな」
「普通に良い曲だ」
「素晴らしい歌でした」
「修正箇所が7箇所かなぁ…テンポを微調整して…」
「えっ?まさか完成ではない?」
「………えっ?」
「日本語で歌うわけだから、もう少し修正が必要ですねぇ。完成度的には40%ですし?」
「あれで、40%?」
ジャンヌさんが固まってる。
「曲調はもう少しだけ遅くして、少し高めに歌う必要があると思う」
「……ええ?」
メリアさんが思いっきり困惑した顔をする。
「じゃ、もう一回歌ってみますね」
気持ちだけテンポを遅くし、ピアノを弾く。
そして声のトーンを少し上げ、思い出すように、懐かしむように歌う。
歌い終え、メリアさんとジャンヌさんを───泣いてる!?
「小鳥さん、きっと巣立っていっただけなんです!」
「ああ、これが母の気持ちというのか…うん。全然違うんだが!?」
「本当に良い歌詞ですよねぇ」
「そうじゃなくて!」
「修正する所を修正してここまで大化けするなんて誰が信じれらる?」
「あっ、これで70%位です。問題点があと2箇所あるので再調整です」
「「は!?」」
そんな簡単に弾けて歌えるわけないじゃないですかぁ…
大変なんですよ?これでも。
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