694話 修道女(?)の歌


「にゃんぱるる~わんぱるる~みんなでうたお~」

『おー!』

「歌のおにーさん…尊い…」

「おうたのショタにーさん尊い…」

 現在、マイヤとおうた遊びをしております。

 メリアさん、鼻血出てる…そして神兵さん達、涙と鼻血流しながら拝むのやめてもらっても?怖いんで。


 一時間ほどおうた遊びした後、ちょっと打ち合わせをして配信を行う。

「はい。と言うわけで本日はおうた回です」


『待ってた!』

『巫女にゃんこ?巫女にゃんこ!?』

『おうた配信!?一斉連絡送ります!』

『関係各所に緊急アラート流します!』

『ああ、ベッドに、ベッドに行かなきゃ』

『巫女様、今回は泣くやつ?スヤァなやつ?』


「なーんかコメント欄が凄い大事になっている気がしますが、まあ僕の自意識過剰という事で。えっと、ゆったりとした曲調が後半にあるので眠る人は眠るかと」

 そう言いながら隣のスタジオへと移動する。

 中央にはピアノが一台。

 僕はそこに座り「じゃあ、始めます」と言って弾き始めた。


 夜が明けていく様を想像し、荘厳に、そして軽快に。

 庭の木々に一羽の小鳥が。

 修道女がその小鳥を見て心癒やされ、遅れてやってきたつがいとの仲睦まじい姿に平穏を感じ、巣作りを始めた生命の営みを感じる。

 時は過ぎ。

 雛が孵ったその巣は賑やかになり、やがては巣立ちを迎える。

 連綿と続く生命の流れの中、私はここで待ち続ける。祈り続ける。


 そういった歌。

 あんな地雷がなかったら…と思ったけど、これ歌詞自体が中近世の詩をベースにしてる?今気付いたけど。

 途中から女性化して歌おうかなとも思ったけど、慣れない事したらピアノのテンポとかがね…うん。


「───と。如何だったでしょうか」


『』

『』

『風の情景が…』

『ちょっとお袋に電話したくなった』

『落ち着くまで待って』

『寝てる人と、眠気を耐えた人に対して泣かせに来る巫女様ひでぇ』

『歌詞がちょっと古い感じだけど、巫女様がエグすぎ』

『音声が情景に自動変換される恐怖。なんで?』

『知らない丘の上の修道院が見えたり、その側に十数本の木が立ってるの見えた』

『よう俺』

『私そんな光景生まれて一度も見たことないのに見えた。今泣いてる』


「悪いコメントはなかったから、良い…かな?」

 そう言いながらチラリと待機しているゆる姉様とミツルギ姉様を見る。

 ───アカン。ゆる姉様泣いとりますやん。

 ミツルギ姉様も何か堪えてるぅ…


『どうして元の歌詞で歌わなかったのでしょうか』


 と、待っていたコメントが来た。

「あ、提供者様ですね。申し訳ありませんが、造語で歌っても周りが分からなかったら伝わりにくいと思い一緒に添付されていた意訳で歌わせていただきました」


『えっ?造語?』

『いや確かに意訳でないと伝わらないような?』

『でもこの配信なら言語が変換されない?意味だけストレートに繋がる的な』

『楽曲改変?それはマズイでしょ』

『じゃあ元の言葉で歌ってください!』


「うーん…口に出すと『全面降伏いたしますのでどうぞこの世界を御統治くださいませ』という意味になるんですよねぇ?百年以上前にダンジョンに呑み込まれた下位上級世界の言葉でそう書かれているらしいんですけど、関係者ですか?」

 どうやらゆる姉様とミツルギ姉様が逆探知に成功したようだ。


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