639話 デモと、身内政治


 巻き寿司を作り切らずに20本ほど神域のテーブルの上に置いておく。

 邪幼女神様が他の神様を呼びに行っている間にデザートとしてクッキーもお皿に出しておいて箱庭へ移動する。

「兄さん!大変な事が起きてる!」

「えっ?何事?」

「日本全国で訳の分からないデモが起きてる!」

「いやホント何事!?」


 デモの標的は政府だった。

 しかも僕に対して不義理を働いたとか。

「なんでや!政府関係ないやろ!」

「不義理を働いたり問題を起こしたのは日本国民であり一部官僚と一般人なんだけどなぁ…」

 以上、僕と佑那の寸劇でした。

「───狙いはデモ主催者の保身だと思うけど」

「うーん…僕がデモを起こすよう指示しているとか言う人達も出てくるだろうね」

「兄さん?」

「なーんかやる気がなくなってくるなぁ…」

「兄さん!?」

 僕はごろりと横になる。

「触らぬ神に祟りなしって言うけど、みんな僕の事が嫌い?何でこんな疲れる事するのさ…まーた磯部総理や浅野副総理がここに来る事になるじゃないかぁ」

「あっ、そう言えば…」

 佑那が何かを思い出したのかカバンをごそごそと漁る。

「はい。兄さんのスマホ」

「えっ?僕持ってるよ?」

「社用ではなく個人用!若菜さんが社用以外で個人的な緊急連絡先を持っていた方が良いって」

「なんか申し訳ないよ…」

 そう言いながらも起動させる。

 アプリの類は殆ど入っていないようだ。

 何となく電話帳を見ると、若菜さんと佑那の電話番号が既に登録されていた。

「妹特権!」

「…まあ、良いんだけどね?お礼の連絡しておこうかな…」

 若菜さんのアドレスを押すと電話番号や………

「誕生日とか体重、スリーサイズまで個人情報が満載なんだけど…佑那も?」

「私は違うよ!?私は名前と電話番号くらいだよ!?」

「……とりあえず、お礼の電話をしよう」



「若菜さん凄く喜んでいたね」

「…凄いテンションだったね…流石兄さんの信者」

 横で聞いていた佑那が疲れた顔をしている。

「むしろ結羽人兄さんの信者なのでは?」

「それはないよ。確実に友紀兄さんの信者だよ」

 頼りになるお姉さんなのに…どうしてああなった…

「……あと、凄く不穏なことを言ってたね」

「市民団体が保身と政権交代のために動き出したって…あのデモのことだよね」

「多分」

「…佑那、今日佑那が配信しない?」

「えっ!?」

 まさか僕がそんな事を言うとは思わなかったのか佑那が無茶苦茶驚いている。

「僕はふて寝しているって」

「まあ嘘は言ってないけど…良いの?」

「良いよ、日頃の鬱憤を晴らす勢いで言いたい放題言っちゃって」

「…分かった。あとでね」

 佑那が僕の隣でゴロンと横になる。

「あっ、2人ともズルイ!私も私も!」

 ラヴィ姉さんが畳間にやってきて僕の隣で横になる。

「いや、ラヴィ姉さんはもうすぐ会談でしょ?」

「そうなんだけどさあ…面倒」

「日本との会談って予定あるの?」

「ん?今日。この会談の後で夕方あるよ」

 おっ?なんてタイムリー。ご都合主義的な采配?

 あと佑那。僕の腕に抱きつかない。

「官僚は信用ならないし…姉さん、もしその場で何か便宜を図るとして、国とではなく信用者取引とかどう?」

「今の内閣に対してのみって事?……良いわね。でも、なにかあったの?」

「今の政権を降ろそうと保身連中がデモ起こしてる」

 佑那…容赦ないな…

「建前としては行政高官への不信と国民感情が僕に対してあまり宜しくない事を前面に出して一方で現内閣の方々の僕への配慮を感謝して…とかどう?」

「思い切り私的ね」

「でも姉さん的には?」

「私のしようとしていた事よりも差し引かれた感じだから全然オッケーよ」

「超身内政治」

「良いの良いの。公正にって言われたら公正に何処とも国交を結ばないって言ってやるし」

 ラヴィ姉さんがそう言ったら僕に泣きつかれると思うんですよ…


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