638話 合流と、ブートキャンプ


「はぁ…疲れたわ…」

『箱庭までもう少しですから…』

「癒やされたい…膝枕を縦で」

『そんな要求をしたら私がグーで殴ります』

 神域からラヴィ姉さんとリムネーが出てきた。

「大統領!?それに、教主様!?」

 紅葉さんが大声を出した。


「リムネー、教主なの?」

『いえ、私は巫女代理であり神国の精神的象徴ですが…』

 リムネーがそう言って僕を見る。

 多分『誰?』って事かな?

「……ああ!紅葉さんね」

 ラヴィ姉さんがそう言うとリムネーは納得いったという顔で頷いた。

「何で知って…友紀ちゃん?」

「ラヴィ姉さんはつい最近まで僕の中に居たから。それにリムネーは使い魔のようなものだから」

 そこまで言って僕は「ああ、そう言えば」とリムネーを見る。

「リムネー、僕から10メートル以上離れたら箱庭に戻されるんじゃなかったっけ?」

『あの時はそうでしたが、私も成長したのです!』

 エッヘンとドヤ顔するリムネー可愛い。

『実際の話は幾つかの裏技と一度お父様と箱庭との線が切れた時に裁量権が広がり、お父様とヴェール様が混ざっていた事もあって何方かが近ければ問題は無いのです』

 リムネーがそう言い、ラヴィ姉さんが苦笑する。

「だいたい100メートルくらいね」

「でもそれだけだと厳しくない?」

『そこで裏技です』

 中央の神社と教会に箱庭への針穴レベルのホールを開けてそこを基点としているらしい。

『箱庭に近い所におり、いざとなれば逃げることも出来ますのでそこを基点に同じく100メートルは行動できます』

「針穴レベル…」

 それ、フラグじゃない?

『世界の許可は得ているのでいざとなれば閉じられるようにしてあるのと、救命師団に依頼してそのポイントを守ってもらうように依頼しています』

 あっ、そこは対策しているんだ…

『最悪箱が対処できるようにポイントをその範囲付近においています』

「流石リムネー…三重の守り…」

『あと、マイヤ姉様にもお願いしてあります』

 コレ、確実に大丈夫なヤツですやん…

「私、3時間後に会談があるからそれまで少し休むわ…この世界の人間って本人達が幾ら隠しても精神防壁が薄いから隠し切れない色々なモノがよく聞こえてきて疲れるのよね…」

 あー…欲望ギラギラな感情が滲み出ているんだ…

「…紅葉さん?」

 紅葉さんが急に目を押さえて踞ったので何事かと聞くと、

「お二方が眩しすぎて…」

「あっ、見えるようにしていたら大変だよ?オフにした方が良いよ」

「完全にオフにする仕方、分かりません…」

 ポツリと、紅葉さんが言う。

「あれっ?完全にオフに出来なかった?」

「できないよ…」

 あ、泣きそうな顔しているし。

「彼女も衛士もまとめて鍛えます」

「半日で何処までできるか分からないが…下のジム借ります」

「えっ!?」

 板額さんと白城さんがそう言って紅葉さんを掴む。

 慌てる紅葉さん。

 ───うん。この流れだとラヴィ姉さんが鍛えるとかだと思っていたんだけど…

 まあいいや。

「ついでに契約もやるのであと2人追加して合計5人を指導しよう」

 白城さんがニヤリと笑う。

「…うん。お願いします」

「友紀ちゃんっ!?」

 いやぁ…紅葉さんを全うに外に出られるようになるためには…ねぇ?


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