637話 力量差と、昔話


 喋ることの出来る使い魔…

「喋ることが出来るようには…うん。マズイか」

「常人では少し無理かと」

「しかし神仙界へ入ることができそうな資格持ちではあるな」

 白城さんが否定的なことを言い、板額さんが勧めるようなことを言う。

 ただし、青年をジッと睨んでいた。


【板額さん、あの人に何か問題でも?】

【板額:完全に信じることが出来ないので】

 どういう事?

 僕が首をかしげると、板額さんは少し険しい顔をする。

【板額:悪い宮中警護をしていながら女を攫ったり宝物を盗み売るので】

 ぇえー?

「ああ、召喚と同時に契約をして貰わなければ」

 突然白城さんがそう言いだした。

「どういう事?」

「いえ、何となくですが…」

 あっ、青年の顔が「えっ」って顔してる…

「まあ、紅葉さんに何かしようとしても結界で弾かれると思うけど」

「「あー…」」

「えっ?何!?私何かされるの!?」

(ブンブンブンブン!)

 慌てる紅葉さんと必死に首を横に振り否定する青年。

 まあ、いきなり「貴方犯罪者ですよね?」なんて言われたらねぇ?

「下手に喋ることが出来るようになるのも問題ですから」

「あー…舌先三寸で騙しかねないから」

 板額さん、なんか凄く恨み持ってません?



 束帯姿の青年2人と直衣姿の青年が1人が召喚された。

 ただ、1人は青年と言うよりは…少年だった。

「あとは実力だけど…武装が武装だけに相応の実力が無いと厳しいな」

 白城さんの台詞に3人が反応した。

「どうやって確認するんですか?」

 紅葉さんが白城さんに聞く。

「何、簡単なことだ。私に攻撃してもらうだけだ」

「えええっ!?」

 悲鳴と驚きの混じった声を上げる紅葉さん。

「鬼や土蜘蛛を貫く程度の攻撃であれば私の障壁を一枚も破壊できない」

 そうキッパリ言い放った。

 言われた衛士達は化け物を見るような目で白城さんを見ているんだけど…

「今の外はそういった類が普通にいるのに対処できないとか笑えんぞ」

 板額さんは不機嫌そうにそう言い放つ。

「やっぱりお外怖い………」

「実家付近は玉藻さんが守ってるから大丈夫だよ!?」

(((!!?)))

 マジかよコイツといった顔で僕を見る武官3人。

「他にも兄さんが拾ってきた妖怪や妖精達が周辺警備しているから」

「良い悪い分からないじゃ無いですか!」

「一目で分かるからね!?」

「えっ?」

「呪詛や呪物もそうだけど、攻撃色と邪念色があるから!それを隠してもすぐに分かるし、何よりも紅葉さん昔からそれ感じ取ってたでしょ」

「えっ?えっ?」

「香也に無理矢理連れて行かれた川崎市の心霊住宅付近で…」

「……ああ!幽霊とのキス事件の!」

「「はぁ?」」

「アレは…うん。香也が悪い」

「まあ、相手の霊も女性でしたし…涙目でしたけど」

「攻撃色も邪念も何もかも吹き飛んでいたね…」

「あの時私は死ぬかと思いましたけど…」

「歩いているだけなのに周辺が異界化する幽霊なんて凄いよねぇ…」

「だからといって責任取れと投げ飛ばした友紀ちゃんも…」

「そもそもあんな所に騙して無理矢理連れて行く香也が悪い」

 今だから言えるけど、あの霊は中級クラスどころじゃなかった。

 物理的に影響していたから妖怪化していたと思うし。

 ───香也と女性の霊はおよそ1分間キスしてたからなぁ…異様な光景だったなぁ…

 代償として香也が2日間引き籠もったけど、連休だったからセーフだし。


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