598話 襲撃事情と、軍師(?)の一言


 ちょっとお高め楽器のことは見なかったことにして自ブースへと戻る。

「そこまで高いわけでは…」

「2~3万の物もあるよね?」

 僕が出来るのってリコーダーやピアノくらいだよ…


 午前のお仕事を終え、志堂菓子店へ向かう。

 と、にゃんこいた!

「みーちゃん見付け」

「誰がみーちゃん!?…なんじゃ。なにかあったかの?」

 猫がこちらにやってくる。

「うん。今朝協会本部が襲撃されてね?虎の人とか、虎に襲われたんだけど」

 猫にそう言うと何かを思い出したように頷く。

「ああ…あの虎人か…矢口に公園があるじゃろ。向こうからじゃよ」

 えっ!?矢口渡駅の所!?

「あの辺りに公園?」

「新田神社の付近じゃよ」

 結構離れてるよね!?…あ、あの辺りも矢口だっけ?

「巽さん?」

「……2~3箇所ありますね」

 すぐにスマートフォンで検索をする巽さん。

「そこに武装した連中が投石機みたいな物を使っておったから暗がりに乗じて斬り裂いてくれたわ」

「「ええー?」」

 いや軽く流したけど、武装した人達?相手は怪人!?

「人は殺しておらんよ?足の腱は切ったが。虎人4体と翼の生えた虎1体は滅したが…ああ、奴等トラック?に乗って逃げおったぞ」

「………巽さん」

「すぐに連絡します」

「猫さん大手柄だよ!

「おっ、おう?」

 抱きしめてワシャワシャと撫でる。

「アレは妖怪だったの?」

「ああ、ただしダンジョン産じゃろうな。しかしそれを操る人というのは…アレは人じゃったが…むぅ」

「悪魔や魔人とかではなく?」

「ではないのう…器は人じゃった。取り憑かれておったらすぐに分かるぞ。偶に見かけるので憑いているモノだけ払ったりしておるしな」

 有能過ぎない!?

 でも、そうなると…

「相手はダンジョンに与した人間?」

「どうかのぅ…その辺りは知らぬ」

「見合った報酬をあげたいんだけど…何か食べたいものは?」

「商店街やら近隣住民からもらいすぎておるから要らぬ。むしろもらいすぎて太っ…腹ごなしに遠出するという状態じゃからな?」

 にゃんこ帝国が出来てないかな?

「ほれ、用事があるならさっさと行け。妾も巡回の途中じゃ」

 それだけ言うと猫は一瞬で跳躍し、姿を消した。

「姫様。あの周辺道路に設置されている防犯カメラの解析を急がせています」

「うん。でも、虎人とか強かった?」

「はい。かなり」

「猫さん倒したって言ってたよね…」

「それは奇襲戦と防衛戦と違いでは?」

 猫強すぎ説もあるよ?

「現場に職員を派遣しているので何か分かるとは思いますが…しかし周辺住民からの通報がないのも気になりますね」

 だよねぇ…

 志堂菓子店に行く前に佐々酒販店に入る。

「いらっしゃい」

「いつもの!」

「72リットル入りも入荷しているよ!」

 店員さんはニヤリと笑う。

 僕が「いつもの」と言っただけでどうして日本酒樽って分かるんだろう…

「あ、じゃあそれを」

「あいよ毎度あり」

「………どうしてそんな分からないやりとりで…」

 巽さんが変な顔してる。

「最近直接来なかったし、神様方も色々動いているって配信でやってたじゃないか。その流れからして…今日はお祝いか何かあるのかと思ったんだよ。念のために54リットル入りもあるよ」

 この店員さんはっ!…軍師かな!?

「あ、じゃあそれも買います」

「姫様?」

「いや、本当に今夜は神様方のお祭りなんですよねぇ」

「えっ?」

 うん。そのどん引きな表情。

 僕もしていると思うけど、この事を読んでいる人がいるなら…今晩辺りも襲撃を仕掛ける可能性もあるかなぁ…

 支払をしながらこれからのことに頭を悩ませた。


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