597話 エンプティーと、デリバリー
SIDE:友紀
僕がレポート再開して20分ほど経過した頃、みんなが戻ってきた。
「岩崎、助かった」
「いえいえ…そんなに多かったんですか?」
「そこまで多くは無かったんだが…民間人を襲ったりするんでな…これ見よがしに私達を引き剥がそうと通行中の車を襲ったりな…」
課長達はかなり疲れた様子…と言うよりも課長と巽さん以外の職員は疲労困憊といった感じだった。
もしこれがもう少し遅い時間だったら…
「しかし…どこから投げられたのかな…現在自衛隊が着弾場所を調べている」
着弾した場所のえぐれ具合を見れば入射角度が分かるというアレかな?
「…岩崎。じつはあたまはんぶんくらいはたらいていないな?」
「いえ、思考の60%をずっとレポートに向けているので」
そう言うと課長は僕の所へとやってきた。
「───上が追放されて漸く聖者職や神職系への有用性を訴えられるようになったか…しかし、岩崎と巫女とが結びついていない訳でもあるまいて」
無茶苦茶呆れたようにため息を吐く課長に僕は首をかしげる。
「そう言えば、このレポート依頼ってどこから来ているんですか?」
「ん?ダンジョン殲滅部隊だ」
んんんんっ!?
課長からメール転送できているから知らなかったけど、それって問題ありじゃあ…
「去年からちょくちょく来ていましたよね?うち、経産省の紐付きですよね?」
「紐付きというか…まあ、そうだな」
「問題無いんですか?」
「中務省も絡んでいるから問題は無い。今では紐付き云々はほぼ関係なくなった」
関係なくなったって…ぇえ?
そこでニヤリと笑わないでもらっても?いや巽さんまで…
えー…今午前8時です。
僕は食堂で朝食を食べています。
…うん。頭が冴えてきた。
夕飯と朝食取ってなかったのかぁ…いや、今朝食食べているけど。
「うーあー…あんかけ炒飯がお腹にしみるぅ…」
「まぁた食べてないのか?「味見でお腹いっぱいです」とか言ってたんだろ」
コック長…それは言わないお約束ですよ…
「姫。本当に大丈夫なんですか?最近色々限界なのでは?無理をしない方が…」
巽さんが無茶苦茶心配してきてるけど、うーん。
「無理をしているつもりはないんですよねぇ」
時間の間隔がちょーっとズレてしまったり、お腹すかないなぁってそのまま放置したり…あれ?これ前も同じ事したなぁ?
「僕の体が省エネ化し始めてる?」
「そうはならんだろ」「それはおかしいです」
うっわ、コック長と巽さんのLR攻撃…
「まあまあ…そんな事よりも「すみませーん!こちらに岩崎様は居られますかー?」…うにゅ?」
呼ばれたので振り向くと運送会社の人が少し大きな荷物を抱えていた。
「はいはい僕ですけど…何方からですか?」
「月刊ジェイド編集部からです」
「え?どこ?」
とりあえず受け取っておこう。
受け取りのサインをして荷物を受け取る。
そんなに重くはないけど…うん?
「楽器?何故?」
「住所含め歴とした会社ですね…と言うよりも大手出版社ですね」
「へー?」
念のため防御できる僕と巽さん以外の人を少し遠ざける。
箱を開けると…ハードケース入っており、それを開けると…
「「ええー?」」
ヴァイオリンが入っていた。
いやなんで?あ、手紙…
手紙を開封する。
「………あー…」
「姫様?」
「えっとね、巫女にゃんこ制作者?の漫画家さんからだった」
「何故?」
「…なんか、楽器の練習を出来ればお願いしますって」
「巫女なら雅楽系では?もしくは巫女鈴など」
だよねぇ…
軽く確認。練習用ヴァイオリンかな?
巽さんが調べている。
「姫様、これは7~8万円の代物ですね」
「練習用に出す金額じゃないよね!?」
「これから練習を?」
「……出来る人からちょっと教わってみる」
静留さん、時間取ってくれるかなぁ…
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