351話 7dayPM2~ようこそ石長比売様

 石長比売様を箱庭神域へとご招待。

「わぁ…」

 嬉しそうに箱庭の風景を眺め、深呼吸をする。

「ああ、ここは神気が満ちていて…だけど、とても優しい空間だね」

 あ、白獅子達が来…玉兎も来た!?

「ブー!ブッ!」

 何か一生懸命伝え───生臭っ!?

「あー…みゃーこに薬草ねだって追い返されたんだね…」

「ブ!」

「無理矢理取ろうとしてない?」

「ブーブー!」

「じゃあ…はい。1個渡すから、これでお薬つくってね」

「ぶ!」

 イソイソと金桃をしまい、駆け去っていった。

「ちゃんと臭い落としてよ!」

「ブゥーーーッ!」

 なんか「分かってるーーー!」って言っているっぽい。

「今のは…何ですか?」

「玉兎って分かりますか?」

「えっ?あの?薬師仙獣の!?」

 確かに人ではなく獣ですけど…

 白獅子達は少し困ったように僕の周りに集まる。

「ガゥ…」

「もしかして、君達にもみゃーこは投げてきたの?」

「ガウ」

 あ、違うんだ。

「マイヤ、通訳お願い」

『あの自我植物が僕たちに乗って移動しようとするから困ってます!…って』

「あー…」

 畑から出ないけど、他者にのっての移動はOKという認識かぁ。

「うん。近付かないように。飛び乗ってきてもそれは畑の外だから駄目だし」

「ガウゥ…ガウ!」

『玉兎に交渉持ちかけて駄目って言われたから臭いものを投げつけてきた!』

「ほほう?」

 これは…送り返そうかなぁ?あちらの世界に。

 それとも隣の小さな畑に隔離しようかな?

「ありがとうマイヤ」

『先に屋敷に行ってるね!』

 超高速でマイヤが飛んでいった。

 いや、転移したら?と思う僕はきっと無粋なんだと思う。

「では、屋敷に案内します」

「えっ?あ、はい」

 石長比売様。色々なことが一気に起きたためキャパオーバーになって固まってしまってた…ごめんなさい!



「わぁ…!」

 うん。二度目の「わぁ」いただきました!

「暫くの間ここに住んでいただきます。ただ、申し訳ないんですけど、僕と兄さんがちょくちょくここに来ますので…あ!あとお隣さんは神兵のお姉さん方なので、お気軽にどうぞ」

「神兵?」

「はい。妹のスキルですが、こちらで神域警護として待機してもらってます」

「……ええ…?そんな事、出来るの?」

 もの凄く戸惑った顔の石長比売様。

「まあ、出来ているので問題無いかと」

 この不思議空間で難しいことを考えても仕方ない!

「…まあ、これほど神気が満ちているのであれば何が起きても不思議ではない」

 まあ、うん。色々起きてますねぇ…生態系が無茶苦茶だし。

 屋敷の中を案内する。

 石長比売様を部屋へと案内する。

「完全な和室じゃないんだね」

「和室の方が宜しければ隣ですのでそちらに…」

「ああ!こっちで十分だから!」

「そうですか?食事はマンションの神域で食べますか?それともここで?」

「ここで、お願いしても良いかな?」

 少し申し訳なさそうに聞く石長比売様に「分かりました」と返す。

「いつもここで作っているので問題無いですよ」

「良かった…まだ人が多いのはちょっと…」

「少しずつやっていきましょう。ね?」

「…うん」

 少し恥ずかしそうに小さく頷き「頑張る」と決意を込めた目でそう言った。

 こういうのって、頑張らない方が良いんですけどね…


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