906話 飯テロでは無く調理テロ
11時頃カウンターの方が少し騒がしくなった。
そして暫くしてカウンター業務担当の山本さんが少し困った顔をしてやってきた。
「あの…京帝テレビの方が巫女様にお話しを伺いたいとお見えなのですが」
「………私が対応する」
課長がため息を吐いて席を立った。
「熱量が足らん」
戻って来た課長は不機嫌そうにそう言った。
「本人が目立ちたくないと言っているのにインタビューを求める時点でお察しなのですが…」
「まあ、そうだな」
「今は廣瀬さんやゆる姉様方が朝晩配信しているから僕はやらなくても良いと思うんですよ」
「そんな事言ったらミコニウム欠乏症で死者が出るぞ!?」
「ええ!ミコチャンを1日12秒以上摂取しなければ禁断症状が出ます!」
「人を元素やニコチンみたいに言わないでくれませんかねぇ!?あと巫女ちゃんに似ていて摂取ってどうするのかな?って考えちゃうじゃ無いですか!僕飲食物じゃ無いですよ!?」
「「幸せになる…オクスリ」」
「……何で揃って言うんですかねぇ?僕オクスリでは無いですよ?」
『えっ?』
いや、なんで場の空気が凍るの?
なんでみんな「嘘だろおい」って顔してみるの?
と、お昼のベルが鳴った。
「もうっ!お家帰る!」
僕は会議室経由でマンションへ戻った。
「ただいまー!」
神域に入ると…死屍累々だった。
まさか…ずっと宴会を?
「…おー、おかえり!」
「おっ?帰ってきたか!」
大物主様と大山祇様が近所のおじさんのノリで声を掛けてきた。
「まったく…おつまみほぼ無しで飲んでいたんですか?」
「んー?いいや、食堂からから揚げデリバリーして貰ったぞ」
マジかこの神様方…
「女将さんからお土産貰ったので皆さんでどうぞ」
お土産その1。
料理長さん達が酒盛り用のオードブルを5つも用意してくれていた。
とりあえず3つ出しておこう。
「あと、これも貰ったんだけど…」
頂いたお土産その2のクーラーボックスを開ける。
中には大きな毛蟹が5匹…杯?入っていた。
「これ絶対蟹の話していたから気にして用意してくれたんだろうなぁ…」
「ほぉ~」
「まあ、時期的には此奴らの方が手に入りやすいか」
あっ、なんか不満げ。
まあ、ちゃっちゃと料理しよう。
「師匠!これ記録に残しても?」
タイムさんが手を挙げて聞いて来た。
「まあ、うん。お任せ」
お任せと言った瞬間にカメラをセットしたよ…
まあいいや。蟹しゃぶにはせず、茹で蟹と蟹汁を作ろうかな。
「まずは旅館の女将さん、料理長さんに感謝!」
解体して殻をちょっと砕いて軽く煎る。その後長ネギと昆布、水を入れて一煮立ちさせる。
沸騰したらアクを取りつつお酒を投入し、弱火で更に2~30分煮て最後に布濾ししたら完成。
さてさてこの煮だし汁で蟹汁を作るわけですが…
ここのキッチンは久しぶりだからみんなが反応している。
ふはははは!蟹汁は土鍋3つ分だけだぞぅ?
残りは茹で蟹。
茹で蟹のゆで汁は…炊き込みご飯に活用するので。
これに関してはあまり蟹が強くなって欲しくないので殻を割ったりはしない。
「…師匠。早い。早過ぎるッス」
「でもやっていることは単調でしょ?」
「まあそうなんスけど…」
洗米したあと茹で汁を入れ、日本酒少々と生姜の千切りもin。
出来上がったら蟹を入れずにカニカマを入れる外道です。
あと錦糸卵と白髪葱があれば完成。
『突然の飯テロかと思ったら調理テロだった』
『巫女様京都行ってたらしいけど、そこの女将さんから!?』
『相変わらず巫女様は巫女様だったw』
『巫女様の料理はやっぱり良いなぁ』
『スローで1.5倍楽しめる!』
『香りがあったら多分俺達は死ぬ』
「…配信にしてしまってたッス」
タイムさんのてへぺろ可愛いなぁ!
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