552話 焦燥と、焦土
SIDE:結羽人
流石に何もしないとなると、友紀が起きた時にむくれそうだな…ここは、友紀のためにも軽くサポートはしておくか。
「佑那の兵が到着するまで数時間…少しは減らしておくか…LADYソーディア」
『はい、マスター』
俺の手前に仮想スクリーンが現れる。
そこに映し出されているのは地球より460kmほど離れた場所で待機している次元潜行大型軍艦ソーディアの統括人工精霊マリアンナだ。
「現在陽光炉はどれくらいチャージされている?」
『通常威力であれば219発分、邪霊以上一般モンスター程度であれば3788発分です』
「日本以外の全地域へ3788発撃ち込め。まあ、余ったら日本に撃ち込んでも良い」
『宜しいのですか?こちらのエネルギーは必要なのでは…』
「6000発分のエネルギー結晶を手に入れた。1つでそれだけの代物だ」
『っ!?では!』
「ああ、遠慮せず使え…仲間には当てるなよ?」
『大盤振る舞いですっ!』
あ、駄目だこれは聞いてない。
俺は小さくため息を吐き、運悪く当たる連中の冥福を祈った。
SIDE:世界
ソレは突如天から降ってきた。
崩壊したダンジョンへ、そして絶望の象徴のような大きさのモンスターへ。
天から降り注いだ一条の光がソレを貫き、消滅させた。日が暮れ始めていたからこそ分かる。
この光の攻撃はほぼ世界中の崩壊したダンジョン及び強力なモンスターの居た場所へ同時に着弾した。
この光景を見た一度光に浄化されたことのある国々は誰の仕業なのかすぐに見当をつける。
巫女様だ。
巫女様に違いない。
そう口々に言い、気の早い者はすぐに感謝の連絡をする。
しかし、ダンジョンはそこまで甘くはない。
まだモンスターを排出し続ける。
そして十数分後に世界全体の崩壊ダンジョンに対して第2射目が着弾した。
着弾後暫くは周辺一帯に淡い暖色光が広がり、モンスターの類は直撃せずともその光によって溶けていった。
それを見た守備隊や軍は怪我人の収容と態勢の立て直しを図る。
たかが数分、されど数分。
撤退や立て直しを図るための時間は万金に値するものだった。
日本を含めた全世界に1射目で1757発、2射目を合わせると合計3514発発射した。
───残った274発は…1つに圧縮した光弾を問答無用で原初のダンジョンへとぶち込むという暴挙に出た。
焦った神は慌てて全結界点を起動。
これにより全世界の崩れたダンジョン跡は隔離され、外に居るモンスターを駆逐すれば…という単純な話にはならなかった。
世界中のダンジョン侵攻によって一時は次々と姿を見せていたダンジョンだが、大小合わせて2600あまりあった。
そして今回ダンジョン返しを起こし崩壊したダンジョンは…1400あまり。
まだ1200程相手側管轄のダンジョンが残っているのだ。
横やりが入ったために神々の考え通りの完全掌握には至らなかったものの、神々がそこまで労せずにダンジョンの半数を掌握し、目的の7割を達成することが出来た。
世界は当面の脅威が去ったと歓迎し、残されたダンジョンへの対応準備を開始した。
そして数時間が経過したが───巫女はまだ、沈黙したままだった。
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