908話 巫女にゃんこ奉納歌~結び~到着


『巫女様信者に聞くこと自体間違いだと思います』

『あと関係者に聞いても同じ解答だと思います!』

『中毒者に要らないかと聞いているようなものですし?』

『配信して欲しい人や神が殆どだし巫女様大好き勢多いんですよ?』

『神様への飲食代を税として選択式寄附税を政府が用意してくれたら…』

『政府主催の巫女募金や巫女くじを!』

『巫女くじ1等は巫女様膝枕or高級ポーションセットとか?』

『一口1000円だとしても10万口は買おう』

『ガチ勢過ぎる奴来た!』

『待って何の話だ!?』


「…うん。みんなに聞いた僕が悪かったってことかぁ…」

 僕はため息を吐いた。


 配信を終え箱庭へと戻る。

 なんかモヤモヤする。

 大多数が巫女役がいれば問題無いと思うんだけどなぁ…

 そんな事を思いながらふと時間を確認する。

「14時半…ご飯作るにはちょっと早いかな」

 どうしようかちょっと迷う。

「兄さ~ん!兄さん宛に書類が届いてました~!」

 佑那が封筒片手に走ってきた。

「編集部かららしいですよ!」

 編集部?………ああ、巫女にゃんこの作者さんの所か。

 佑那から封筒を受け取り中を確認する。

 漫画家の黒守さんの担当編集者さんから挨拶と今回の歌詞に関しての黒守さんの葛藤などが簡潔に綴られていた。

「…作品は”巫女様であり、感謝を伝え続けてきた貴方様をリスペクトした結果生まれた二次作品のような物です”黒守版ではここまでの文章と表現が限界とのことでした…かぁ」

 流石編集者。汚い。

 黒守さんを下げることで逃げ道を確保しながらもこちらに押しつける姿勢だ。

 そして二枚目…厚紙のような漫画家用原稿用紙を見る。

 そこには桜吹雪の中踊る巫女にゃんこ達の絵と詞が描かれていた。

「───この一枚に全てをかけました。これが限界ですのでこれを軽々と越えて下さい…って、無茶言うなぁ」

 一人なんとか生き残るトゥルーエンドではなく、あくまでハッピーエンドを希望するその歌詞。

 大団円なお祭りソングをボツにしたから悩み苦しんだんだろうな…

 きっと生きている。生きていて欲しい。

 希望を失ってはいけないから。

 歌詞からそんな叫びが聞こえる気がする。

 歌詞は全ては書かれていない。残りは僕が書けという事だろう。

「随分と挑戦的ですね。でも、その気持ちは痛いほど分かります。あの子達は幸せになって欲しいので…せめてフィクションの人物は幸せになって欲しいです」

 佑那は目を瞑り、自分に言い聞かせるようにそう呟く。

「家族仲良くハッピーエンド…うん。じゃあ、この子達には幸せになって貰おうか」

「兄さん?」

「親子三人だけど、みんなが幸せなフィナーレと、その先へと…ね?」

「何をしでかすつもりですか?」

「ん~?…今は佑那にも秘密だよ。佑那も勿論ライブ参加だもんね?」

「……私も踊るんでしたね」

「マイヤとリムネー、廣瀬さん…そして佑那が踊るのは決定事項だよ?」

「うああああああ……兄さんにコスして欲しかったばっかりにぃぃぃ…」

 膝を突く呻く佑那。

 ふははははは…佑那も僕の恥ずかしさのお裾分けだ!

 なんて馬鹿なやりとりをして佑那の追求を躱した。


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