898話 酒蔵にて
土間を改装したようなその空間は懐かしさを感じる。
そして入って右手に大きな冷蔵ショーケースが置いてあり、そこに日本酒と…甘酒もあった。
「甘酒もあるんですね」
「ええ。微アルコールとお子さんが飲んでも大丈夫なものの2種類あります。うちの孫が飲みたがったんで需要があるかなと」
照れながらそう言うご年配の男性───社長さんは本当に良い人なんだろう。
「コレは小瓶では無く四合瓶ですか?」
「まあ、そんなに買ってくれる人がいないんで」
少し暗い顔をしたがあえてスルーしよう。
「こちらは1升以外で…樽とかは?」
「そんな金は無いですよ!息子がタンク売りはどうだとか言ったことはありましたが、買い取ってくれるような所がないんでねぇ」
話を聞きながら時計を見ると9時になった。
「あの、ちょっと試飲の前にお願いしたいのですが」
「何でしょうか」
「こちらにちょっと結界を張っても良いですか?」
「は?」
「あ、その前に…マイヤ」
『パパどうしたの?』
ミニミニマイヤが僕の側に現れた。
「ハヴァスターイ様ってこっちに転送できる?」
「あ、それなら自分するッス」
「は!?えっ!?」
「まさか、巫女様!?」
突然次々と色々な物が現れたため仰天する社長さんと運転手さん。
「ん。呼んだ?」
タイムさんがゲートを開ける前にハヴァスターイ様が現れた。
「マイヤと一緒に飲めそうな甘酒を「早く。甘酒早く」…本当にマイヤが絡むとおかしくなりますね?…ということで済みませんがまずは甘酒から」
「っひえっ!?か畏まりましたぁ!」
「岩崎…」
「姫様…」
えっ?僕やらかした?
冷蔵ショーケースから甘酒を取り出して試飲用グラスに注いでくれた。
「はい、どうぞ」
ハヴァスターイ様とマイヤにグラスを渡す。
2人は受け取って一口軽く飲み、目を見開いた。
「『おいしい!』」
声を揃えてそう言うとクピクピと飲み始めた。
「じゃあ、これお土産に…ではなく今みんなで飲む?」
そう聞くと2人ともコクコクと頷いた。
「じゃあまず…甘酒のアルコール無し10本とアルコールあり10本お願いします」
「ぅえ!?ええっと、864円と990円の10本で…18,540円です」
「2万円からお願いします」
「はいっ!…1,460円のお返しです…」
「マイヤにアルコール無し、ハヴァスターイ様はアルコール入りを渡しますのであちらで飲んでくださいね?」
「『はぁい』」
2人にそれぞれを渡すとすぐにしまい、帰っていった。
「続いて日本酒の試飲と購入なんですが…社長さん?」
「…」
放心状態だ…
「まあいいや。次は神域を3人分の広さで作って…」
「今度こそ自分がゲートを開けるッスね」
「お願い」
タイムさんがゲートを開ける。
そして…
「ゆうくんゴメン…来ちゃった」
せお姉様が謝り、
「酒と聞いては」
「来ずにおらりょうか、いや、ない!」
「神々しさの欠片もないので…帰れ呑兵衛とその親玉。」
「「扱い酷くないか!?」」
やってきたのはよりにもよって大山祇様と天之御中主様の呑兵衛タッグだった。
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