78話 TS化した僕は出勤後いつも修羅場

 エレベーターで降り、エントランスのコンシェルジュさんに挨拶をする。

「姫様。おはようございます」

 巽さんがコンシェルジュさんの横で普通に待機していた。

[巽さんおはようございます]

 特に変わりないここ数日の日常───は、やはり出勤と同時に変わらず修羅場だった。

「ああ、岩崎。外務省経由でとある国から助命嘆願書が大量に届いているらしいぞ」

 課長からのその台詞がスイッチだったと思う。


 だれかなだれかな~?

 嘆願書、出すのはだれかなぁ~?

 ファックスが止まりません。

 メールが凄い勢いで増えています。

 同じフォーマットの嘆願書にお願いをギッチギチに書いた代物が送られてきます。

 うーん営業妨害。

 最初は助命嘆願書だったのに、次に来たのは嘆願書だった。

 欲望丸出しの醜いヤツがほとんど。

 誰かが煽ったんだろうなぁ…でもそれは良い。

 ただ、一部の人達が聖職系の人間が神の力を私物化しているとか書くのはアウトだと思うんだけどなぁ。

 資質を加味したランダム職であり、努力をすればその職に就く可能性もある。

 しかも外れ職扱いしている人がいたのも事実。

 それに対して常識が覆ったから狡いと言うのは如何なものかと。

 あと、学習能力ないのかな?

 

【せお:大元の扇動者割り出したけど、処す?処す?】

 ほらぁ……

[暫くお待ちください。こちらの対応を見てからと言うことで]

 そう口の中で呟く。

「課長、二締目入りました」

「1000枚超えたのか…無記名嘆願書のFAXとメールか…分からないと思っているのか…」

「あ、でもFAXのヤツは結構切羽詰まったものが多いですよ?」

「電話回線もパンパンだな…ただ、窓口は平穏と」

「うちだけ狙い撃ちね!」

「つまらないから椅子無しで仕事して?」

「だじゃれと捉えた人こそ椅子無しの刑だよ!?」

 ───うちの部署、どうも最近とんでもない事が多すぎて慣れてしまっている模様…申し訳ないです。

 と、心の中で頭を下げる。

[あの、課長]

「ん?どうした?」

[うちの神様が扇動者特定できているそうなんですけど、処しますか?と]

「神に人の理屈は通じないと分からせるのも一つの手か…こちらとしては公表してもあまり良い結果にはならないと思うが、緊急記者会見でもするかな…」

 ため息を吐く課長に僕は決断をする。

[その記者会見、僕も参加しても構いませんか?]

 僕の台詞に課長は少し困ったような顔をする。

「…しかし、それは岩崎が困らないか?」

[まあ、困りますが…修道服…シスターモードで対応しますし、今使える最終手段をその時に行いますので]

「なんだかもの凄く、嫌な予感がするんだが…」

[神罰執行よりは大分マシだと思います]

「…分かった。今すぐ上に掛けあう。巽、スマンが中務省の方にはそっちから頼めるか?」

「わかりました。緊急記者会見を合同で行うという事で…今日の午後ですか?」

「恐らくそうなるだろうな…これだけ仕事を邪魔されているんだ。早く終わらせなければな」

 課長が好戦的な笑みを浮かべ、席を立つ。

 そして僕は姉様方へメッセージを送る。

【テレビに出たい人いませんかー?】

【せお:(`・ω・´)ハイ!】

【ゆる:御免忙しい。裏方やっとくね】

【ミツ姉:ノ】

【はは:はい】

 …出たいんかい。特に伊邪那美お母さん

 一人出て貰えば御の字かなぁと思っていたけど、日本の神様がいたら大丈夫かな…いや、仕掛けたのがメディアだった場合の犠牲が凄いことになりそうだ。

 あと、せお姉様とミツルギ姉様はどこでそんな対応を学習したんですかね?


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