77話 TS化した僕は神様の喧嘩(カチコミ)に巻き込まれる

 アディエーナ様以外の全員が揃い食事を始める。

 …来ないですね。

 数分経っても部屋から出てこないアディエーナ様に僕は首をかしげる。

[少し見てきます]

 席を立ち、アディエーナ様の部屋へ向かう。

 ノックして部屋に入る。

[アディエーナ様?]

「うううう……お姉様しゅごいぃぃ……」

 なんか、ベッドの上で、身悶えしてる…

[アディエーナ様?]

「っひゃいっ!?」

 ビクリと全身がはね、アディエーナ様が恐る恐ると言った様子でこっちを見た。

「お姉様!?」

[はいよ。おはようございます]

「おはようございます!昨晩は生涯忘れることの出来ない得がたい経験をありがとうございましたッッ!」

 何故かベッドの上でジャンピング土下座をしてきた。

[え?何事?]

「お姉様!お姉様のテクニックに私は…私は!」

[いや、だから何事?]

「───えっ?まさか、本当にあれは…」

 顔を真っ赤にしてモジモジとし出したアディエーナ様に本当にナニが起きたのか…よりも朝ご飯を早く食べて欲しい。

[アディエーナ様。皆さま既に食事を始めていますのでお早めにお願い致します]

 僕はそれだけ言って部屋を出た。


「何があったの?」

[ええっと…悶えていました]

『えっ?』

 全員が同時に動きを止め、こちらを見る。

 いや、こっち見ないでくださいよ。

[みんな朝食始めているので早めに来るようにと伝えてきました]

 ───皆さん。何故「マジか」って顔するんですか…

 フラフラしながら出てきたアディエーナ様を尻目に食べ終えた方々にコーヒーや紅茶を提供していく。

「偶にはこんな朝食も良いわね」

「和食の方が良かったけど、うん。これはこれで」

「ホテルの朝食みたいでなかなか良いね!」

 なかなか微妙に好評だ。

 和食が良いというのは圧倒的なんだよなぁ…ちょっと考えよう。

 出勤準備を終え、行ってきますと声を掛けて神域を出た。

「姫様。おはようございます」

 神域を出たら巽さんと即エンカウント。

[おはようございます。えっと…?]

「昨日のこともありましたので念のためこちらで待機しておりました」

[ありがとうございます]

 お礼を言うと巽さんは微笑み「さあ、行きましょうか」と手を───

 バチンッ!

 巽さんの手が弾かれた。

「!?」

 慌てて距離を取った巽さんだったけど、僕の左右にいた女性に目を見開く。

「───驚いたな。神域から悪魔が出てくるとは」

 そう呟く巽さん(偽)に僕は首をかしげる。

[あの、もう少し本物に似せる努力をしていただきたいのですが…]

「なにっ!?」

 僕は黙って胸を指さす。

[顔だけ真似たその姿はなかなかキツいですよ?]

 なぜならその体つきは男性のそれであり、男物のビジネススーツだった。

「くっ!」

[いや悔しがられても、そんな雑な変装は…いくらどこかの神様の使いでも…]

【スキャン完了。神権行使】

 えっ?なんか物騒な台詞が…

「へぇ…現地神の使い如きが僕らに喧嘩を売るんだぁ」

「!?」

 ゆる姉様?

 神域の扉が開き、ゆる姉様が普通に出てきた。

 しかも神威マシマシで。

「そっかぁ…僕らに喧嘩を売ると言うことがどんなことか、勿論理解した上なんだよねぇ?■■■■?」

 ビシリ、と相手の動きが止まり、顔を大きく歪ませる。

 ゆる姉様の最後の言葉が聞き取れなかったけど、恐らく聞いてはいけない類なんだろう。

「神権剥奪。この意味分かるよね?」

「待て!まさか…」

「誰が喋っていいと言った?」

 その台詞とともに神威が更に増し、その偽巽さんがベシャリと地べたを這うような姿になった。

 そして、姿が崩れ、一匹の獣が姿を見せる。

「…あとは僕が始末するから。ゆーちゃんはいってらっしゃい」

[あ、はい。行ってきます…]

 にこりと微笑まれ、僕は何も言えずにフロアを後にした。


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