966話 卵と胎動


 厚焼き玉子、だし巻き玉子、カステラ玉子…そしてオムライスと玉子スープ。

 卵何個分?と聞きたくなるレベルのお子様大好き玉子料理を作った。

 デザートはたまご蒸しパンですわ。ただしお一人様2個で。


 オムライス人気が凄かった。

 いや他の玉子料理も凄かったけど…オムライスはちびっ子達にクリティカルしたようで…モリモリ食べておかわりをね…

 あの子達がおかわりするのは想定外だったんだ。

 まあ、他の人達はするだろうなって用意していたから助かったけど。

 だから慌てて神様方の分をいつもの量に10人分追加した。

 結果、

 全然足りなかった。

 何で?

 ハヴァスターイ様の食べる速度が通常の倍だったのもあるし、他の神様方の食べる速度もいつもより早かったよ?

 でも、それでもね…いつもの沢山食べる場合の量+10人分増やしたんだよ!?

 よく食べるときの神様換算の10人分だよ?…

 学校1学年分とかそんな感じかなぁ…140名分って。

 まあ、オムライスとスープだけその量だったから楽と言えば楽だったけど…

 ご飯を炊くのは時短出来ない…と言うかしたくないし。

 炊飯器という最終兵器はあるけどね。



 SIDE:世界



「何をやっているんだ!?」

 軍警察の突入部隊が突入した廃屋には数人の男と多数の死体が転がっていた。

「何って、新しい秩序を教え込んでやっているんだよ」

「何?」

 廃屋の中央に立っていた男がクルリと振り返り部隊員達を見る。

「我等が神からの神託だ!欲望を隠す必要は無いと!人は獣から生まれそして人となりやがてそれらを昇華し召される。

 まずは獣性を、野生を取り戻せと!我等が神はそう仰っているのだ!」

「くそっ!撃て!」

 一斉射撃によるマズルフラッシュで一瞬だけその廃屋内全体が見えた。

 壁に何人もの人が磔にされており、彼等が何処までも異常である事を証明する状況であった。

「───キ、ヒッ、神はァ…仰ったァ!汝ノ欲を解放しロとおおおおっ!」

 一斉射撃を受けたにもかかわらずダメージを受けた様子も無く突撃してくる男達に対し後方に控えていた聖者が聖光を放ち、それに合わせて銃士が属性弾を放った。

 ボシュッという音と共に男達が吹き飛ぶとそのまま地面へと叩きつけられ、動かなくなった。

「…とんでもないな。聖光によるアシストが無ければ仕留めきれなかった」

 銃士がボソリと呟く。

「と言うことは、奴等はモンスターと同等に?」

「ああ。グールなどでは無くゴブリンのような…!?」

 倒れていた男達の体がグズグズと音を立てて溶けて無くなっていく。

「奴等は…モンスターだったのか?」

「それは有り得ません。モンスターでもあのような消滅は…んっ?あれは?」

 隊員が男達の居たところへと走り、何かを拾い上げた。

「金の、仏像?」

「何?仏像?おい、どうした?」

「こエ、聞こエる…欲望ヲ、解放せヨ…」

「それを捨てろ!」

 別の隊員が駆け寄り、銃床で仏像を叩き落とした。

「ナニ…を?アレ?どうしたんだそんな怖い顔で」

 呆然としている隊員の腕を掴み、聖者の元へと引っ張っていく。

 そして聖光を浴びせ、全員が安堵のため息をついた。


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