56話 TS化した僕の兄が話をぶった切って妹の武勇伝を語る
「そんなに上手なの!?」
「私も聞きたいな」
「えっ!?ちょ、兄さん!」
ゆる姉様とミツルギ姉様がかなりの興味を持ってしまった。
「確かに佑那の歌は上手いが、それ以上に女騎士がエントリーされたと思しき多数のエピソードが面白いぞ」
「にゃあっ!?結羽人お兄様!?」
まさかの裏切り!?といった表情の佑那に兄さんは口角だけ微かに上げるアルカイックスマイルで笑う。
───あ、この笑顔は隠し切れないドSの笑みですわ。
多分僕と佑那は同時に同じ考えをしたのか天井を見上げ、ため息を吐いた。
「えっ?何かとんでもない事でも?」
「俺が把握している武勇伝は三つある。一つは女子校内に四人の不審者が侵入した際、いち早く察知したコイツは侵入箇所と経路を割り出し、先手を打ってトラップをしかけた上で二人を戦闘不能にし、残る二人を武力鎮圧している」
えっ!?
「流石に通報しても警察はすぐには来ませんし、武器を所持しておりましたが練度が見るからに低く…結羽人兄様から武術の手ほどきは少々受けておりまのでえいっと…」
[気恥ずかしげに言って良いモノじゃないよ!?]
「…逮捕されたのは中級探索者で戦闘職だ。それらが警官隊が駆けつけるまでの間に無力化されていたと聞いた時は…」
「ご免なさい!」
───なんか、戦闘民族二人に非戦闘員一人って、実は僕他所のうちの子?
「素晴らしいな!圧倒的に不利な状況から冷静な分析と現状を打破できるだけの武力か!」
あ、ミツルギ姉様スイッチ入った。
「他にも生徒会の後輩がストーカーに連れ去られそうになった際に同じタイミングでその子を誘拐する予定だった誘拐犯グループとブッキングして周辺一帯が無法地帯の大乱闘になった話とか」
「何それ映画!?」
ゆる姉様が目をキラキラさせている!?
「その一件以降、私、その子からお姉様と呼ばれているんですけど…」
無事だった事に心からの感謝をしないと…
「夏休みに友人と旅行に行った時だったか?シージャックに遭って一人で七人の武装犯を倒して縛った挙げ句一人ずつロッカーに詰めた話とかもあるな」
「犯人鎮圧に一日掛かってしまいましたし、足りない技量を演技で誤魔化したりと、今考えるとお恥ずかしい限りです…」
……これ、スキルも何もない一般の人、しかも妹がやったの?
え?うちの兄妹は単騎薩摩藩だった?実はセ〇ールだったの?
「そこで船に乗せて流さなかった事を評価したいですね」
「あ、それ僕も思った」
まさかの伊邪那美お母さんとせお姉様がログインした!?
「どうしようもない人達を流すのはちょっと…海が汚れます」
そんな回答期待してなかったわ…僕としては閉じ込めるのが精一杯だったとでも言って欲しかった…
「その後突入してきた特殊部隊相手にクレーム入れたって話も…」
「クレームではないですよ!?お腹がすいていたので食事をしていたら武器を持った部隊が突然入ってきたので「少し遅いのではありませんか?」と言っただけです」
…やだこの子。ナチュラルに喧嘩売ってますわよ?
「一緒にいたお前の友人のお父さん、警察官僚の上の人間だったって聞いたんだが?」
「はい。直接凪子さんからお父様へクレームがいっていました」
「───そのせいで何故か俺vs特殊部隊で一日中戦う羽目になったんだが?」
「初耳ですよ!?」
「その後年一回頼むと言われてお前のやらかしの負い目もあったから承諾したら対ダンジョン部隊も参加して日程が何故か二日になっているんだが?」
「申し訳ありませんでしたあああっ!!」
まさか、歩く戦術核って…一人で特殊部隊と軍部隊を倒せるから?
えっ?うちの人達の戦闘力、高すぎ!?
[兄さんって実は流派〇方不敗とか使える!?]
「友紀…変な混乱するな。実弾や攻撃は変形光壁や空間湾曲でどうとでもできるし、体術で対多人数ができる程度なんだからそんな大層な事じゃないぞ」
[兄さんなら刀無し九頭〇閃とか手刀燕返しとかできるんじゃないかな?]
「………」
この人、やりやがったな!?
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