166話 疲労~蓄積した疲労は種類によっては非常に危険です。
背後から抱きついている大宜都比売様に「ありがとうございます」とお礼を言いながら軽く抱きしめている手を叩いて離すよう促す。
が、
離す気配、ないのですが…
[あの、大宜都比売様?離していただけないと僕、お夕飯を作れないのですが…]
「………」
ギュッと更に強まった。
そして
「
伊邪那美お母さんが大宜都比売様の頭をどうにかしようとしているぅ!?
「流石に今回は疲れ切っているようだね時間も時間のようだし」
せお姉様の台詞と同時に、
あ…
ノーマルAが解け、カジュアルモードになってしまった。
「姫様。お体の具合は…」
[まだ、大丈夫。それよりもあの教団のことが…]
「無事退治されていたっすよ」
スッとタイムさんが現れてそう言ってきた。
[………タイムさん]
「はい?なんッスか?」
[ありがとう]
「!?どういたしましてッス!」
タイムさんが一押ししたんだろうという事は分かる。それを自分からは言わない事も。
だけど僕としてはそういった事は言って欲しい。
[巽さん]
「はい」
[教団が荒れると思います。日本側の後処理等、お願いしても?]
「畏まりました」
力強く頷く巽さんに「無理しないでね?」と苦笑する。
「君は少し休んで。夕飯は作れる神が作るから」
せお姉様の台詞に小さく頷いて───以降の記憶がない。
SIDE:巽
「…ほらぁ。無理しすぎだって」
完全に気を失っている姫様をタイム様が抱き上げ、祓戸様がため息交じりにひとりごつ。
「命を削って色々頑張っても相手にそれは分からないんだから…」
───確かに。今回はかなりの無茶をしている。あり得ない力の水球を作り、音階術と言霊。神楽舞を駆使して奇跡とも言える御業を成し遂げた。
代償がないはずはない。
「祓戸様。姫様は、無事ですか?」
「何を以て無事というのか…まあ、彼が言うには無事だろうね。僕らも休めば大丈夫と言う。だけどね…そうじゃないんだ」
「無事であって、無事ではない…?」
「この子は精神力が異常なだけの一般人だよ?君や彼の兄妹とは違う。色々な疲労が蓄積している」
分かっている。それは分かっていた。
「休ませようにも、休まない子なんだよねぇ…」
「……はい」
「急に出張が入って、一泊二日の旅とか…イベント起きないかなぁ?」
「!?…すぐに協会及び中務省に確認を取ります」
「うん。良い研修があればこの子も入れてあげてね」
「はいっ!」
「君もだよ?」
「…えっ?」
「君も少しお疲れだよ?恐らく上司もじゃないかな?」
「……少し、相談してみます」
「うん。そうして?タイムはこの子をベッドで休ませてあげて」
「了解ッス」
「添い寝は駄目だよ?」
「ぐっ!?……了解ッス」
なぬっ!?添い寝!?
「温泉…女性同士…」
祓戸様がわざとらしく言った台詞に「何も起きないはずはなく」という謎の言葉が脳裏をよぎった。
「っ!失礼致します!」
「はい。お疲れー」
神の掌上だとは分かっていてもむしろご褒美。課長を巻き込む決意を固める。
にこやかに手を振る祓戸様に一礼すると急ぎ協会へと向かうことにした。
姫様の休暇で温泉旅行!いっその事貸し切り出来る所が…ある!
その時の私の脳内はそう言ったことしかなかった。
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