759話 約束されたお夕飯


「もぉ…ふたりとも、めっ!」

『『えへー』』

 アペプとマイヤがお腹はむはむ参戦した結果私のお腹は大惨事だった。


『センシティブな配信だった』

『なんでや!可愛い子達のじゃれ合いやろが!』

『それ、審議の石板で誓って言える?』

『ごめんなさい』

『誓えますがナニカ?』

『聖人男性?聖人女性?』


 センシティブ…かなぁ?

 ちょっと首をかしげながらお腹周りを綺麗にして服を下ろした。

「ただいまぁ」

「ただいまです」

 せお姉とゆる姉が隣のスタジオからやってきた。

「いやぁ、不可避の一撃だった」

 何でそんな清々しい笑顔なのかなぁ!?



 配信を終え、お夕飯の仕込みを始める。

 約束の生姜焼きと肉じゃがを大量に作る。

 しかし、流石村井さんのお肉は良いなぁ…あっ、とんかつ用も用意されてる!これは勝ち確じゃないですか!今日は豚牛祭りだ!

「師匠のテンション爆上がりッスねぇ…そんなに凄いんすか?」

「お肉の品質もそうだけど、カット技術も凄いんだよ!よーし!頑張っちゃうぞ!」

 生姜焼きと味噌漬け焼き、とんかつ、豚の角煮は…次回かな。

 牛肉はミニステーキ丼も良いよね、そういえば、豚の角煮代わりに黒酢煮とかもいけるかな?

「師匠、師匠…幼女姿で作るつもりッスか?」

「ちょ!?なんで言っちゃうの!?」

「あっ…元の姿に戻らないと。ありがと」

 フィラをちょっとジト目で見ながら手早く元の姿へと戻る。

「慣れてしまわないように気を付けないと…」

「そんな事よりも肉のカット技術のすごさを!」

「まあ、ちょっとだけ味見させてあげるから…まあ、いつものものとは違う「家庭の味」を楽しんでね」

 僕の台詞にタイムさんが「あっ、これ沼だ」とよく分からない返しをしてきた。



「………あの、もう一切れ。もう一切れだけ」

「だーめ。佑那もそんな感じで言ってたなぁ…しまいにはこれでおにぎり作って!とか。懐かしいなぁ」

「なんスかこの違い!タレとの相性?いや肉も美味いんスけど、タレが凄いって訳ではなく肉がタレを適量纏っている感じ?もう、なんか凄いッス!」

「これでご飯があったらね…無限だから。もしくはキャベツの千切り」

 そう言いながらも僕はキャベツの千切りを次々と作っていく。

 あっ、肉じゃが肉じゃが…これも昔の作り方だから手間が掛かるんだけど、美味しいんだよなぁ…

「やべぇッス…岩崎家の家庭料理の原点にして頂点の料理なんスね…」

「えっ?コロッケとカレー、あと特製シチューがあるよ?」

「……えっ?」

「村井さんの所の肉で作るカレーとシチューは凄い。あ、でもコロッケはまだ村井のおばさんには及ばない思う」

 あっ、タイムさんの顔が劇画調になった。

 肉じゃがは…もうちょっとか。

 今のうちにご飯を飯櫃に…

「兄さんっ!特製生姜焼きの香りが!」

「お夕飯まで待ってねー」

「そんなっっ!?」

 ショックを受けた顔の佑那。

 ふむ…これは…

「今後佑那がやらかしたら佑那の好物を作ってお預けって方法も…」

「それだけはっ!それだけは止めてくださいっ!」

「…準死刑宣告ッスね」

「接触禁止令と同等の厳罰ね」

 いや、タイムさん?フィラさん?それは言いすぎでは?


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