319話 5day AM2~選択肢はよく考えよう

『えっ?八十禍津日神がいるぅ?ないない。神はそう簡単に地上に降りられないよ。神域を周囲に纏って降りるかスケールダウンさせて───ああ、そこに居るのは何の神かは知らないけど、分け御霊だから斬っちゃって良いよ。

 それは八十禍津日神ではなくて淀みだからね?誰かの分け御霊が淀みを纏って融合した姿。そもそも八十禍津日神、大禍津神は黄泉由来で「とても良くない神霊の集合体」って意味なんだし…えっ?聖騎士は駄目ーっ!!、失礼。兎も角倒してOK僕が許可する!』

 通話が切られた。

「───神の分け御霊が淀みを纏っているだけらしいので倒して構わないそうです」

 何とも言えない顔で藤岡にそう伝えるものの、事はそう簡単ではない。

「分け御霊とはいえ神は神。そう簡単に言ってくれるな」

 藤岡は口元を引きつらせながらそう独りごちた。


 SIDE:マンション


「僕が細かくレクチャーした時間返して!?メリットデメリット更なるランクアップ先まで聞いておいてその選択って何なの!?」

「なんでですか!?兄で姉なんてお得だったんですよ!?妹が弟になるのもアリじゃないですか!」

「何血迷ってるの!?オッサンになる可能性は考えなかったの!?」

 騒ぐ佑那に祓戸は叫んだ。

「…ベースは私だから兄さん達みたいなイケメンやショタになるものとばかり」

「基本はね!?ただ君の場合は聖騎士と言っても階級の高い聖騎士だからね!?基本的には+5~10歳上がった姿を想定していたからね!?」

「ふーん」

「あ、興味なさげ…体臭とか怖いよ?頭皮の匂いとか…」

「具体的かつ悪意マシマシですね!?」

 世の男性が聞けば絶対に嫌な顔をしそうなマイナスポイントアピールをする祓戸。

「そりゃあねぇ…でも本当に良いのかい?ゆうくんと同じように防御機構に青年モードを組み込むと言うのも「では神衛隊長でお願いします」早いな!?」

「男の人になってみたかったんです!兄さんみたいに性別が変わっても平然としていられるかとか、周りの反応はどうなんだろうとか!色々考えたら楽しそうだったんです!」

 どうでも良いような事を力一杯言う佑那に祓戸は呆れ気味に一言。

「ゆうくん、事務手続き含めかなり面倒だったみたいだよ?───具体的には求婚されたり、周りがバグったり…」 

「……ソレがあった……」

「……君、結構ノリでやらかすタイプだよね…別の意味で主人公っぽい性格だよ」

「結羽人兄さんには確実に負けますが!」

「比較してはいけない。アレとは絶対に比較してはいけない」

「じゃあ、神衛隊長にするよ!」

 祓戸の声掛けと共に佑那は自身の体の内側から何かがあふれ出るような感覚に顔をしかめる。

 そして、

「っぐううううううううっっ!?」

 先程の比ではないダメージが体を駆け抜け、思わず踞る。

「まあ、流石に魂すら軋むレベルの拡張だからそうなるよねぇ…不意打ち状態で心身共に変化したゆうくんってどれだけ耐性あったんだろう…樹神殿はそこまで考えていたのかな?」

 祓戸がのほほんと自問自答しているが、佑那はそれどころではない。

 これに似たダメージを一度受けた事はある。

 しかしあの時は外から内へのダメージで、更に内部から破壊されるような───

(あの時、結羽人兄さんは受け入れて友になれって)

 体内で暴れている何かをイメージで掴み、とりあえず大人しくさせる。

 そして説得をするようにゆっくりと馴染ませて───取り込んだ。

「……うん。出来た」

「うそぉ…この子もやっぱり兄妹だよ。うん。無茶苦茶だ…」

 数分と経たずに強力な力を御す事に成功した佑那に祓戸は思い切り顔を引きつらせていた。


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