100話 乱入~挑戦者…えっ?…新規入居者あり?
皆が心配しながら見守る中、起き上がってキッチンへと向かう。
片付けは綺麗にされている。
ダイニングテーブルを見ると、アイスクリンが結構残っていた。
あまり美味しくなかった?
「ゆーちゃんがいてこその美味しい食事って感じだから…美味しかったけど、心配で皆出ていたものだけしか食べなかったんだ」
[何か済みません…あと、ありがとうございます]
ちょっと照れてしまう。
「てぇてぇ」
「尊いです」
ゆる姉様もミツルギ姉様もニッコニコ顔だ。
では残ったアイスクリンは今夜のデザートですね。
「本当に大丈夫?」
心配そうに聞いてくるゆる姉様に大丈夫ですよと返し、
[あ]
あることを思いだした。
「どうしたんです?調子が悪くなりました?膝枕します?」
[ミツルギ姉様、そんなに慌てないでください。ミツルギ姉様のおかげで本調子に戻れましたから]
「そっ、そう?」
[和菓子の予約注文しておかないとなぁ…と。気が付くとほとんど食べられていたので]
「「あー…」」
[納得したような声を同時に上げるお二方は誰が犯人か分かっていますよね?]
「9割は」
「9割は」
[ほぼせお姉様ですね。まあ良いんですけど、残り少なくなったら言って欲しかった…お店の近く通っていたのに…]
「彼女だけでは無いが…彼女が喜々として他の所にお裾分けに行ったから」
「僕の好物だけはちゃんと残してもらえたのでホッとしています」
「きっと葛藤しまくっただろうね」
「そういう部分はしっかりしていると思うけど?」
せお姉様が完全に食いしん坊お子様キャラに固定されていそうな件について。
電話をして月曜の午後に取りに伺うと予約を入れる。
『腕によりを掛けて作ると言っているから楽しみにして頂戴』
という頼もしいお言葉を戴きました。
量はかなり増えていますが…やる気に満ちているようです。
あまり無理しないでくださいと伝えて通話を終え、神域へと戻る。
さてさて、今日の夕飯はイタリアン予定ですけど…本当にレパートリーがね…
リーン、リーン
鈴?鐘?の涼やかな音が神域内に響いた。
───えっと?
「ああ、来客ですよ」
キョロキョロしている僕にミツルギ姉様が何でも無いことのように言った。
[えっ?来客!?]
急いでお茶とお茶菓子を用意しなきゃ…
「いえ、そもそも約束していない来客ですので不要ですよ」
ぇえー?…招かれざる客、ですか?
「そういった類は音が違いますし、私達の結界を突破できませんから。更に強化しましたし…」
あ、少し自信なさげ…うちの兄が済みませんっ!
「あのー…宜しいでしょうか…」
玄関が開き、隙間から凄い美人なお姉さんがおどおどと顔だけ覗かせていた。
「ようこそ我等が神域へ。貴女は何処の神か、神名を名乗って貰いたいのだが」
ミツルギ姉様がキリッとした顔で問いかけている。
「あ、はい…私は嘗てはローマで家政の神として、祀られておりましたウェスタと申します」
あれ?なんか、凄く辛そうなんですが!?
「もう、維持する力も───なく、最後の繋がりで…境界を操り家事に通じた巫女である彼女を頼りに、此方へと」
そう言いながらもズルズルとその場に崩れ落ちてしまった。
[ちょ、ミツルギ姉様助けましょう!]
「ゲート解除…うわ、ボロボロな挙げ句汚れて…これは酷い」
僕はウエスタ様を抱き上げて神域内へと入れる。
[こんなになるまで…ウエスタ神と言えば未だに信仰自体は習合してある程度は受け継がれていたような…]
「全然足りないのでしょうね…人を守るためには。イタリア辺りの神でしたか…あの辺りは神同士で小競り合いをしていますから」
あー…神様事情は怖いです…
「ただ、この神に関しては恐らく人に寄り添う事を自身に課したのでしょう」
僕がさっきまで横になっていたソファーにウエスタ様を寝かせ、起きた時のためにとワインをグラスに注ぎ、家政の神と言うことで家庭も司っている僕にとってはありがたい神様なので祈りを捧げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます