684話 出撃!協会本部大戦


 SIDE:巽


「巫女様の護衛さんが4人、まだ会議室に残って居るぞ!?」

「置いて行かれたのか!?」

「どうやらここの防衛のために志願したらしい!」

「巫女様の平穏は俺らが守らんとなぁ!」

 顔面蒼白な職員が大声でそう言い合っている。が、その表情は強張っており、強がりである事は目に見えて分かる。

 ただ、カウンター側に居る民間人や非戦闘者の緊張を取るためにも何か言い合わなければならないと思っているんだろう…が、内容が悪い。

 そんな中、大盾を持った女性が会議室から飛び出し、それぞれ打ち合わせをしたかのように移動を始めた。

 正面玄関、職員通用口、業者口、非常口…恐らく向かう先はその方向。

「こちらの騎士団ではこれ以上の食い止めは不可能です」

 部長がそう言いながらこちらへやってきた。

「それぞれの強さは?」

「こちらの攻撃の6~7割は効いていないわ」

「であれば上級悪霊、もしくは下級悪魔クラスか…まあ、鬼レベルと思えば良いか」

 課長は刀を取りだし、ゆっくりと立ち上がる。

「一度軽く当てて引き返す。巽、指揮は任せるぞ」

「はい。ご武運…おや?」

 会議室から姫様の護衛士官3名と救急救命士5名、そして先程と同じ大盾を持った重装救命士が3名姿を現し、駆け出す。

「…巫女様護衛の救命師団、自由人ですね」

「いや、恐らく指示を受けて動いているとは思うが」

 そう答えながらも課長はカウンターへと向かうので私も念のために共に向かう。

 カウンター付近は重軽傷者で溢れているが…うちのメンバーと巫女様の救急救命士達が手早く治療を施している。

 そしてなによりも大盾を持った重装救命士が黒い化け物達の攻撃を不可視の壁で弾いている。

 黒い人間は頭頂部がパックリと割れ、牙のギッシリあるその口をブンブンと振り回しながら襲いかかってくる。

「あの頭頂部にある口は全鉄製のランスすら噛み切る程です」

「えっ?」

「そして騎兵のランスによる突撃すらほぼダメージを受けていませんでした」

 部長の台詞に少し意識が飛んでしまった。

 部長の神聖騎士団は聖属性を有した騎士団。それらの攻撃は相手に致命傷を与えられるはず…それなのにほぼダメージを与えられていない?

「課長、下級悪魔クラスだと認識した方がよいかと」

「それは想定通りだ。まずは───」

 課長が正面玄関を飛び出し、そこに居た7体を一瞬で斬り捨てる。が、すぐに跳び退った。

「此奴ら、呪詛汚染持ちだ。普通の聖属性では突破不可能だ!」

 いえ、貴女今…7体消滅させましたよね?

 次いで護衛士官らが銃器を持ち発砲を…周辺の奴等を消滅させた!?

「超高濃度の神聖属性か!流石は岩崎軍だな」

 黒い飛沫すら重装救命士の大盾結界が弾き、浄化することで問題無く領域を広げている。

「課長、呪詛汚染は…」

「私は問題無い。これのおかげでな」

 自慢げに刀を見せる課長に少しイラッとしながらも師団の働きに目をやる。

「相手の攻勢、でしょうか」

「いや、恐らくこれですら様子見だろうな。一国を陥落させたんだ。何十万単位の燃料を補給したから我々がどれだけの力を持っているのか、弱点はなんなのか…改めて精査したかったのだろうよ」

「まさか、ではこの黒い人間は」

「ダンジョンが創り出した人形部隊だろうな。元人…一般人の。まあ、こちら側の結界強度を確かめるという試みもあったとは思うが…

 巽、これがおさまり次第周辺のダンジョンで結界が壊された所を捜すぞ」

「巡回部隊を再編成します」

 私はブースへと踵を返し、出勤している人員の再編成を急ぐことにした。


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