683話 板額飛行


「アレ?佑那。どうしたの?」

 箱庭の屋敷に戻ると佑那が険しい顔で屋敷に入ってきた。

「兄さんも戻ってきたの?」

「えっ?うん…なんか分からないんだけど…戻れって言われて…何かあったの?」

「うん…今、黒い人がマンション前に居るんだ…数千人ほど」

 なんですと?


「うわ…何この黒い人…」

 エントランスの先、道路辺りには全身真っ黒な人間が道を埋め尽くしていた。

「…結界は作動していますのでここに入ることができないようですが、外の結界は破壊されているようです」

 白城さんが険しい顔で答える。

「えっ!?どれだけ強力な相手なの!?」

「相手の戦闘力は…ふむ。単体で下位悪魔クラスのようです」

 その回答に僕は思いきり顔を強張らせた。

 下位悪魔クラスが数百以上…しかもここに侵入しようとしている…あとは協会本部を襲っている可能性もある。

 何とかしないと…

 僕は白城さんを見る。

「重装、護衛部隊、完全装備で構えろ!」

 ザッッ

 重装救命士25名と護衛士官12名が武装して1階ロビーに並ぶ。

 えっ?足りる?

 僕の疑問に見透かすように白城さんが微笑む。

「力としてはこれくらい居ればこの周辺であれば対処可能です」

「ええええ?…あっ、ついでに近くの審議の石板にこれを補充してもらっても良いですか?」

 そう言って聖水晶片を白城さんに差し出した。

「審議の石板の最短場所は千代田区ですか…神兵に依頼して行ってもらいます」

 白城さんが聖水晶片を受け取り、食堂ゲートの方を見る。

「板額、居るんだろう?」

「バレていたのか」

 ケートから板額さんが姿を現す。

「ほら」

「確かに」

 白城さんは板額さんに聖水晶片を手渡し、板額さんがそれを胸元にしまう。

「此奴らがすぐにお前が飛び立てるスペースを作る」

「分かった。準備は出来ている」

「第一部隊、突撃」

 重装救命士達が大盾を構えて外に向けて突撃し、黒い人を弾き飛ば…大盾振り回したああっ!?

 更に護衛士官の人が飛び出してショットガンのようなものを取りだして黒い人を片っ端から消し飛ばしていくし…

「じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい!ここで待ってます」

「…すぐに戻ってくる」

 板額さんが走り出し、外に出たと同時に天馬が現れ、飛び立っていった。

「これ、探索者協会…どうなっているのかな…」

 僕の呟きに白城さんが僕の方を向く。

「………実は無断で会議室に重装救命士を4名を派遣しておりますので、最悪は免れているとは思いますが…」

 重装救命士であれば大盾結界でなんとか防ぐ事が出来るとは思うけど…うん。僕の気持ちを慮ってくれてありがたい。

「ありがとう白城さん。念のために救急救命士と護衛士官も派遣してもらっても良いですか?」

「分かりました。すぐに手配致します」

 白城さんが頷き、通信機を取りだしてすぐに連絡を入れてくれた。

「───派遣致しました。板額は十数分かかると思いますので食堂でしばしご休憩ください」

「良いのかなぁ…」

「なんでしたら板額が来るまでにご褒美を作るなどは如何でしょうか」

 そう言われたら…うん。作ることにしよう。お団子とか。


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