827話 無題
「異界化している?ということはその地域一帯がダンジョンに?」
マリアンナさんからの緊急速報に僕は首をかしげた。
『ええ。ただダンジョンでは無いようですが…その地域の上空2,000メートルまでは異空間となっているようです』
「何故そこだけなんだろう…他にもカットされた国はあったのに」
『現在各種センサーを使って確認をしていますが、やはり結論はダンジョンに似て非なる異界化と言う結論です。それとは別に問題のあった国々との差異を調査しておりま───中からモンスター…いえ、情報は人間ですが異形化しています』
本当に何が起きているの!?
SIDE:世界
相手側からの応答が無いため小隊を引き連れて国境線まで向かった。
そこで見たモノは漆黒の空間だった。
光を一切通すことの無い闇。
日の光が対象に当たって僅かながら反射する、なんて事も無く吸い込まれて消えているのだ。
「───スマンが柄の長いものか、木の枝を持ってきてくれないか?」
部隊長は隊員に声を掛けると同じ事を思っていたのか隊員がすぐに槍を部隊長に渡してきた。
「自分でやっても良かったんだぞ?」
そう言いながら部隊長は槍をその境界へとゆっくり突き入れる。
感覚は何もない。が、同時に重さも若干無くなった。
まさかと思い槍を引き抜くと───突き入れた先が無くなっていた。
「…撤退、全員一時撤退だ!俺らの対応出来る範疇を超え「隊長!前から何か来ます!」っ!?」
隊員の声に部隊長は慌てて目を向ける。
そこには歪な人のカタチに色々なオプションの付いた化け物が立っていた。
それはヨタヨタとこちらへ向かって両手を振って歩いてくる。
「止まれ!」
そう叫ぶがソレは両手を挙げ、少し速度を速め近付いてきた。
発砲。
部隊長の両脇にいた兵士がソレ目掛けて通常弾を発射する。
ソレは衝撃で僅かに下がるが銃撃が止むと再び歩み寄ってきた。
「儀礼弾装填完了!」
「撃て!」
ダンッ
7.62mmNATO弾がソレを穿った。
通常であれば儀礼を受けた7.62mm弾はグールをも容易く屠れる力を有していた。
しかし、ソレは吹き飛ばされただけでヨロヨロとダメージを受けているようではあったが起き上がってきた。
「そのまま撃て!全員撤退準備はできたか!?」
「撤退準備完了致!隊長!敵、更に来ます!」
「撤退だ!」
部隊長の号令と共に小隊は一斉に撤退した。
その情報は瞬く間に広がり周辺諸国は緊張を強いられることとなった。
通常儀礼弾では殆ど通用しないモンスター。
しかもソレが少しずつ周辺諸国へと進軍を始めている。
ソレを聞いた周辺国は慌てて国境線に部隊を配備し全力で叩く覚悟を見せていた。
この間わずか5時間。
しかしその5時間は致命的な5時間だった。
「モンスターの、軍…?」
ソレらは近代兵器を手に堂々と大通りを通って向かってきたのだ。
「撃て!死ぬ気で撃て!」
ひたすら発砲を指示しつつ本部にこの馬鹿げた悪夢を報告する。
現状を伝えつつも部下に撤退を指示、ありったけの手榴弾をここで爆発させようかと本気で考えている最中、
部隊長の視界は白に包まれた。
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