968話 都市伝説ダンジョンとは


「……よくその情報を知っているな」

 課長に呆れられた。

「あまりにも報告が多かったのでリスト化していたのですよ」

「発見報告は17件。4度あの家には立ち入り調査が入っているが、問題無しとなっている」

「しかしマギトロンを持ち込んで訴えた人もいて要確認のままなんですよね」

「だから通称都市伝説ダンジョンなんだ。ただなぁ…公式記録にはないが1例だけ都市伝説ダンジョンに入った人間がいる。だから嘘と断言できないんだ」

「あ、うちの兄も都市伝説ダンジョン入ったらしいですよ。記録にありますし、映像記録もありました」

「……もうお前さんの兄はダンジョンの神と話をしたと言いだしても私は驚かんぞ」

 なんか課長の兄さんに対する信頼度が凄い…


「───地下鉄ダンジョン。存在したのか」

「うわぁ…骨で作られた大ムカデの高速アタックとか…これ絶対普通の探索者だと死んじゃう…」

「入口付近とは大違いだな…これは叩き斬っても邪魔なモノが一気に押し寄せてくるだろうから辛いな」

 現在兄さんの映像データを鑑賞中。

 電車と同じ位の大きさをした骨の大ムカデが凄いスピードでぶつかってくる映像や、天井からボトボトと落ちてくるゾンビ、そして落ちたゾンビを潰して袋に入れるという謎の行動を取る腐った鬼…兄さんに襲いかかって…袋で殴りかかってきた!?

「完全に異界の生態系だな。私では無理だ」

 課長がギブアップした!?

「まあ、今見て分かるように境界ダンジョンは入口付近以外は殺意が高過ぎる。もし調査が必要だった場合は…余程の人員を用意せねばならないぞ」

「香也とうちの護衛士官、あと2~3名を考えています」

「何故高野?」

 不思議そうな顔をする課長に僕はため息交じりに答える。

「都市伝説ダンジョンと言ったら間違いなく飛び付きますから。ロマンだと言って」

「いや、飛び付くとしてもだな…」

「生還率を考えたら彼が一番ですよ。恐らく一緒に今代の須佐之男命もついてくるでしょうから」

「……分かった。明日の夜に探査の許可を…」

「調査は明明後日にしてください」

 所有者に連絡を取ろうとしていた課長を止める。

「?どうしてだ?」

「立待の月にしかゲートが開かないっぽいので」

「!?どういう事だ!?」

「2件以外は全部立待の月の夜なんですよ。2件は翌日もしくは翌々日ですが」

「その時しか開かないという事か」

「恐らくですが。複雑な手順が必要であれば最低限こういった事は必要かと」

「…確かに。他にも手順はあるかも知れないが、それは現場で頑張って貰おう」

 とりあえず、調査許可は下りた。




「都市伝説ダンジョン!?行きます!はい!今ですか!?行って良いですか!?」

 ハイテンションになる高野に藤岡はため息をつく。

「……落ち着け。行くのは明明後日だ。もし本物だった場合、入口を確認し、すぐに引き返して連絡をくれ。出てくるモンスターは全てが鬼以上だと予測される」

「…えっ?探検は駄目ですか?」

「超質量物体がぶち当たってきたり、ゾンビが入った袋を剛速球宜しくぶん投げてくる腐った鬼…戦いたいか?」

「それなんて無理ゲーですか?」

「岩崎兄が映像資料として残している都市伝説ダンジョンの一例だ。非公式だが私が知っている都市伝説ダンジョンでは呪符すら斬り裂くハサミを持った複数の女性が壁や天井を這い回って襲いかかる廃病院ダンジョンというのが…」

「それは勘弁です!…あ、因みにどちらですか?」

「神隠しの家と言えば分かるか?」

 藤岡の出したワードに高野はピクリと反応し、

「それ東京じゃないじゃないですか!川挟んで向こうの心霊住宅じゃないですかあああっっ!!」

 突然発狂したように叫んだ。


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