349話 7dayAM6~いやそこは休もうよ!(全体意見)
伊邪那美お母さんは「この話し合いを打ち切れ」と言いたいんだろう。
「───忙しそうですね」
「いつもの事なので…ただ女神の茶会は初めてなので準備に手間取りそうです」
普通の宴会であれば作る物はそこまで難しくない。
ただ、今回は女神様。
変にマウントの取り合いがあったら困るし…気合いの入れ方が違う。
「謹慎中では無いのかい?」
「僕の謹慎は通常業務及び神事に関しての謹慎で生活及び神の世話に関してではないので…もし神の世話を止めれば…ご理解いただけますよね?」
「……ああ。今のを見て充分すぎるほど分かった」
総理は重々しく頷く。
「済みません。明日からは全ての謹慎は解除されますので…遮断していた外部情報は明日以降確認し、適宜対応を行っていきます」
「いや、少しは休んだ方が…」
「これまでずっと18時間以上動いていたので…」
「「「「いやそこは休もうよ!」」」」
課長含め全員に突っ込まれてしまった。解せぬ。
帰り際に総理と副総理からそれぞれお土産をもらい、なんだか申し訳ない気持ちになったけど「あのコーヒーに全てを攫われた」と苦笑しながら言われた。
いや、創業500年近い老舗の羊羹とか、創業100年以上経つ老舗のカステラとか…!
勉強します!
「…厄介な物を渡しましたな。彼は伊達に神々の食事を取り仕切っていません。彼は食べれば大概の料理を再現できますから」
何故かドヤ顔で磯部隊長がそう言ってきた。まあ一、二度磯部隊長食べてますしね…
まあ、~~の料理を、と言われたら作りますけど…再現であって本人とは違うので劣化版だと思うんですが…
そんな話をしながらお三方をお見送りする。
課長も一度部屋で休憩した後に協会に行くそうだ。
さて僕は…お昼ご飯とお茶会用のスイーツを作りますかぁ…
SIDE:磯部隊長。
「マジで寿命が尽きるかと思った…副総理。余計な欲はかかんでください」
車を運転しながら磯部がそう呟く。
「…反省している。やはり神は人がどうこうできるモノでは無いな」
「しかし、そうですね…我々も詫びねばならないことが多々あった。それを見落としていた時点で罰せられる側だった」
副総理と総理が反省点を口々に言う。
「───あちらさんとの関係見直し。出来るのか?」
あちらさん。これは神ではなく合衆国を指していた。
「現在基地周辺で小競り合いが続いています。本気で撤退要求を出さなければ暴動が起きますよ」
「昔の沖縄のように、か?」
「まあ、似たような事になるでしょうね。犯罪があっても多少なら闇に葬っていたわけですから」
「示談で表沙汰になる前に隠してきたからねぇ…その不満が噴き出すだろうよ」
「まあ、私の首一つで何とかなるなら兎も角、どの政党も今現在の状況下では政権を取りたくないでしょう。精々のたうち回っておきますよ」
この二年、野党は文句は言うが解散云々は言わない。
それは最近の有事だから、というわけでは無く総理になれば確実に泥を被る。そして同時に何か呪いを受ける…と言う事が起きていたからだ。
前総理の原因不明の急死。しかしそれは明らかに呪いによるものだと今では公然の秘密になっていた。
現に現総理である磯部も呪いに侵されていた。
しかし今回、それが解除されており、友紀には心から感謝をしていた。
「…歴史に名を残す暗君になる気か?」
「既に能なし扱いですから仕方ありませんよ。平和ボケしていたのも事実ですし、おいそれと動けないのも事実…ただ、それを前面に出して巫女様にすがりつくのは違うので…やれることを全てやった上で慈悲に縋るのが限界でしょうね」
「まあ、あの子は善人が過ぎるから周りが確りしているんだ。下手な事しなければ問題は一切無い」
「悪意から何処まで守れるか、ですね」
「そこら辺は俺の仕事だわな…余命宣告から一気に寿命が延びたんだ。泥でも何でも被ってやるさ」
「なんですか。先に逃げるつもりだったんですか?」
「おうよ。ただ、逃げられなくなったようだからな…久しぶりに美味いコーヒーとクッキーだった。やっぱり生きていたいと心底思ったね」
「こいつらの会話がヘヴィー過ぎる…」
「お前こそ伊邪那美命に目を掛けられたじゃないか」
「俺はこれ以上は勘弁ですよ!?あの兄弟の案件で限界なんですから!」
運転をしながら叫ぶ磯部に総理達は久しぶりに笑った。
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