874話 佑那の暴挙(すくぅるみずぎ)


「えっ?ふーん…」

「……えっと、あのぉ……てへっ?」

「佑那、暫くの間箱庭出入り禁止ってことでOK?というか決定ね?」

「ごめんなさいごめんなさい!旧スクール水着はアダルティックでエロスだなんてコメント欄で!」

「どこのコメント欄なのさ!」

「だって他のコメント欄だと神話通りの天鈿女コスとか言ってるから!それよりこっちが良いかなって…」

「どっちも良くないから!…この暴挙、兄さんに報告するからね!」

「み゛っ゛!?」


 SIDE:世界


 世界が漂白され、暫くして視界が元に戻った。

 漆黒の壁があった向こう側、そこには何もないただの地平があるだけだった。

 ただ、その土は岩で出来ており起伏も何もない本当にただの平地だった。

「神々に緊急通達したから穴を塞いだんだろう。それくらいはしてもらわんと」

 ガチャリと扉を開け、白城が外へと出る。

「天蓋に少し穴が空いた程度ですか。ああ、柄が落ちてますね」

 周辺を確認した白城は軽く息を吐き落ちていた杖剣の柄を拾い上げる。

「この技術があの時あれば…いえ、今でもこれは再現するには不可能な技術か」

 柄をしまい、結界等を全て解除する。

 車から15名の重装救命官が降りてきて白城の周りを囲む。

「彼の国にいたすべての生命に、敬礼!」

 ザッッ

 盾を左に持ち右で敬礼をする。

「あちらさんに致命的なダメージを与えられればいいが…いや、ないか」

 そう呟く白城に声がかかる。

「おい、我らが主人の家に帰るぞ。とても面白いことをしているそうじゃないか」

「…私が来る前は涙目で暴れ出しそうだったぞ?佑那がヘイトを向けると言って屋敷に駆け込んで行ったが…」

「妹君も難儀なもんだな…自身の欲望を全面に出しながら他者へのヘイトを自身に集めようとするなんて」

「いやあれは純粋にやりたくてやっているだけだ。割合は8:2だろ」

 白城は佑那の所業をバッサリと言葉で切り捨てる。

「違いない。ただそんなわちゃわちゃしたものをのんびり眺めていられる世界、良いじゃないか」

 ドアにもたれ掛かりメリアは息を吐く。

 ここの時刻は昼になろうとしていた。あの壁…いや空間が無くなったために世界が余計に明るく感じメリアの口角が自然と上がる。

「ああ。既に我々も世界に定着した一個人、いや神人か?第二の生を楽しめるのは心からありがたいね」

「しかし、これで終わり…ではないだろうな」

「本来なら世界の終末だったんだが…神々の審判をこの世界に下されてまとめて消滅…にならなくて本当にホッとしたよ。ただ、ダンジョンは残っている」

「裏切り者…いや、協力者か。それもまだ残っている」

「結構炙り出せたようだが?」

「全部ではないだろうな。それと…」

 白城の表情が曇る。

「あぁ、うちのボスの親父さんか…彼がこの世界のダンジョン管理人になっているとしたら、恐ろしいな」

「それだけのポテンシャルを秘めた者だった。ということだけど…」

「「あり得るなぁ…」」

 顔を見合わせため息を吐くと2人とも車の中へと入っていった。


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