86話 TS化した僕は忙しくも楽しい一日を過ごしました
───疲れた。
あの後トッピングを時間内に各10個作ると言う超荒技をやってのけた。
空間操作、マジでありがたいです。
フライパン内の気圧を少し下げたり、圧力鍋要らない?素晴らしい!
ついでにカレーも煮込みながらちょっとだけ圧力変化させたからトロットロ!
ああ、あとは唐辛子を空間破砕でパウダー状にして…辛さの足りない方はこれかけて貰えば良いか。
かーんせーい!
「……恐らく最も健全なのに高度な使い方しおったぞ…」
「師匠…流石は師匠…」
「天才と言うよりも、鬼才?」
[せお姉様、みんなを呼んできてください。タイムさん、フィラさん。お皿とスプーンを各テーブルに並べてください]
今回はカレーに関しては量を指定して貰うセミセルフでやって貰おう。こうすればトッピングも僕が確認しながら盛れるし。
低俗な神々の戦いが起きないよう対処できる。
全員が揃い、少し不思議そうに空の深皿と僕を見る。
[今回は皆さんおかわりを沢山すると思うので、自分の好きな量指定できるセミセルフ方式にします。ただ、トッピングは僕がチェックするので偏らせませんよ?]
「はーい!」
うん。せお姉様良いお返事。
トッピングの説明とはじめは出来ればプレーンで食べて欲しいと説明してみんながお皿を片手に席を立った。
作るのを手伝ってくれた二人はそれぞれ感動しながら食べている。
他の神様方は…せお姉様以外は少し早い程度。ただ、これ一人3杯いくなぁ。
そしてせお姉様。カレーライスは飲み物ではありません。
「チーズinミルフィーユカツ単体でも美味しいのにカレーと合わせるなんて反則過ぎて停戦合意不可避だよ!?」
いや、いっている意味が分かりません。反則でなぜ停戦合意。
「半熟目玉焼きとウインナーとカレー…これはこれで贅沢な」
「今日の苦労が吹き飛びます…」
[あれ?そういえばアディエーナ様は今日忙しかったのですか?]
「えっ?はい。管理世界の状況を確認してきました。まあ、そこまで悪い状況では無かったので様子見です」
[邪神に支配されていたのでは?]
「いいえ?他の神々が頑張っているようですし、私を封印した方も私の代わりを必死にやっていてそれどころじゃ無さそうなので」
ニッコリと微笑むアディエーナ様。
ちょっとアディエーナ様が管理している世界の方々に同情してしまった。
神様の「そこまで」と言うのはどの規模なのか分からないから…
[ゆる姉様。甘口美味しいですか?]
「うん!お野菜ゴロゴロでハンバーグとも合う!」
[だそうですよ]
「「ありがとうございます!」」
アレだけ作ったのに、気が付くとほとんど無くなっていた。
トッピングは余ったら明日の作り置きと思っていたのに…いや神様方健啖すぎない!?
そしてみんなにお酒と提供を受けたおつまみなどを出して酒宴が始まった。
───アレだけ食べて、更に飲んで。
もの凄く抱え込んでいるんだろうなぁ…色々と。
会話の中でも状況とか聞くとこの世界がかなりマズイ状態だったことが分かる。
あと、襲撃掛けてきた神様の眷属は伊邪那美お母さんの関係者で、ゆる姉様がぶちのめしたとのこと。明日、伊邪那美お母さんがOHANASIしに行くらしいので…その神社大丈夫かな…
宴も二時間経過して三時間に入ろうかと言う時、明日の予定を思い出した。
[ミツルギ姉様。あす、ちょっと実家に行って佑那捕まえて此方に戻ってきますので…稽古の方はどうしますか?]
「ん?…あぁ、昼からにしようか」
[わかりました。では昼までには戻ってくるようにしますね]
「───ゆーくん」
ミツルギ姉様が静かな口調で声を出す。
[何でしょうか?]
「本当はね、私達はこの世界の神々を保護できるだけ保護したら、ダンジョンが溢れきる前にこの世界を囮に時空間封鎖をして奴等を殲滅するつもりだったの」
グラスを置いて此方を見る。
まあ、それが最善というのなら仕方の無いことだと思いますよ?世界を浸食しながら増殖する邪神とは異なる化け物…倒せるかも知れないのであれば、これ以上被害が拡大しないようにと…その考えは間違いでは無いと思います。
「うん…でも、必死に現地人を助けようとしている現地神や偶然見かけたゆーくんを見ていたら、もうちょっと他にやりようがあるかなって、効率的では無いけど、別の方法も考えてみようってなったんだ」
[癌の治療法みたいですね。全てを切除するか、部分切除するか、薬を使うか…色々ありますから]
「ゆーくんや他の現地の良い人間を見て、とりあえず最終手段は危険域手前まで温存しておこうかなって」
[ミツルギ姉様。危なかったら使ってくださいね?]
「えっ?」
[だって、神様方がここまで警戒するこのダンジョンって、危ない存在なんですよね?]
「ええ。少なくともこの領域とそのすぐ上の領域の生物と神では簡単に対処できない…ハズだったんだけどなぁ…
ゆーくんのお兄さんみたいな領域二段飛ばしのバグがいるから恐らくは最終手段は使わずに済むと思うけど」
[うちの兄が済みません…]
予想外に戦力が現地に転がっていたって事は良い事なんだろうけど…謝りたい。
「ゆーくん」
はい?
「もし、万が一でも大氾濫が起きたり、ダンジョンの管理者が仕掛けてくるようなことがあれば、親しい人を連れてここに逃げ込むこと。いい?いくらゆーくんに私達が加護や祝福を大量に与えても限度があるの。あなたは万能でも最強でも無い。これはしっかり心に刻んで?」
[はい。それは重々承知しています]
加護にも祝福にも限度はある。それに頼り切りはいけない。そして過信してもいけない。
僕は常にそれを心に刻んでいる。常に意見を求め、協力を求めている。
でも、それ以上の理不尽は起きる。イレギュラーは起こる。それを頭の片隅に置いておかなければならない。
「でもぶっちゃけ、君が対処不可となった時点で君の兄さんが時空割ってくるじゃないか」
せお姉様が日本酒を飲みながら楽しそうに言う。
「殻を割り、人の器を超越した者。僕達としては彼は神格持ちだが、上位世界の方々からするとまだ足りないのだよね?」
「…ええ。既に色々振り切っていて正直現地神を越えているのですが…現時点では」
兄さんがグローバルどころか次元を越え始めている件について。
「ダンジョン深層域出禁って上位世界の神でもそうそう聞かないと思うぞ?」
「無いですね。かつてダンジョンを九つ同時に滅ぼした光滅の戦神ですらそうはならなかったので」
[それって、深層域にダメージが行かずすぐに切り離して逃げられたからでは?]
「「……えっ?」」
僕の台詞にせお姉様とミツルギ姉様が不意を突かれたような顔をした。
[だって、ダンジョンってリンクするアリの巣みたいなものですよね?次元間行き来して最深部の異形の獣は特殊な物を持っていたりする…
最深部の更に奥があって、デッドラインを破られる前に損切りして常に逃げおおせているのでは?]
「あー…上の部分をいくら踏み潰してもそんなにダメージは無いからなぁ…アリの巣か。成る程確かに」
「最深淵踏破すら、ダミーの可能性…?」
[あると思いますよ?ダンジョンという組織がひたすら本体を悟らせないために、とか]
「陰謀論的だなぁ」
[でも切り札をアップデートしてある程度量産できている時点で疑った方が精神的に不意を突かれにくくなりますし]
「はははは!言い返されたぞ不敗の戦神殿?」
「………私はゆーくんには負けっぱなしですよ?」
笑いながらグラスを鳴らし合う二人に僕は首をかしげつつ空き瓶などを片付け始めた。
自室に戻り、兄さんに明日の予定を伝え、ベッドに入る。
今日一日、大きな事が一杯あったけど、みんなが何事も無く無事に過ごせることが出来ました。今日に感謝。
明日も良い一日をみんなが迎えることが出来ますように───
僕はゆっくり目を閉じた。
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