26話 TS化した僕は公務(ご機嫌伺い)をする

 昼食を終え建物内にあるATMでお金を下ろした後に自ブースに戻ると、課長が少し難しい顔をしていた。

「岩崎。巽から聞いたぞ」

[あ、はい。急いで話を───]

「そっちじゃない。あーんしてもらったミニ稲荷は幸せの味がしたそうだ」

[いや重要なのはそっちじゃないでしょう!?]

「何を言う!私にとっては「はい、あーん。おいなりさん食べて」って耳元で言われたらテンション上がりすぎて鬼神を殴り倒せるぞ!?」

[駄目だこの課長。早く何とかしなくては…]

「まあ、冗談?はさておき…午後から公務扱いで出て構わない。そのまま直帰扱いだ」

[えっと、良いんですか?]

「ああ。それとこれを渡しておこう」

 そう言って課長は少し厚めの封筒を差し出してきた。

 その封筒は少し前にATM横でみた封筒だし、なんなら今僕も持っている。

[これは?]

「神様方への接待費だ。ああ、昨日の食材費も経費で落としたからな?」

 行動が、読まれてる!

「君の食費を圧迫させるわけにはいかないからね。それに即了承が出たよ」

[なんかホント済みません!]

「ああ、レシートや領収書は要らないから」

 なんで!?



 協会を出て真っ直ぐスーパーへ行く。

 相変わらず不特定多数に見られているなぁ…

 食品とお酒を買い込んで一度マンションへ戻る。

 …まだ後ろをついてくる人居るんだけど…

 そのままマンションに入り、コンシェルジュさんに挨拶をしてエレベーターに乗る。

[失礼します]

「おかえり~。そこはただいまって言うんだよ?」

[せお姉様ただいまです]

「うん。おかえりなさい」

 にぱぁっと笑顔を見せるせお姉様が綺麗で可愛い。

「あ、心配しているだろうから言っておくけど、解除したから」

[何をですか?]

「祝福及びスキル停止措置」

[アナウンスなかったんですけど!?]

「君にはね」

 機嫌良さそうに僕の持っていた買い物袋を一つ持ってくれた。

「僕和菓子が食べたいなぁ」

 了解しましたお姫様。

[あ、でもせお姉様?]

「ん~?」

[巫女服のモードの中にアメノウズメスタイルってあったんですけど…]

「謹んでご免なさい」

[ちょっとお話し合いが必要かなぁって思っちゃいましたよ?上半身裸で踊れと?とか、どんだけ踊らせたいのさ!とか思いました。

 普通に神楽舞と祓戸社モードがあったからそちら選びましたが]

「だから御免て」

[そういえばお二方は?]

「他地域の神の所に行って打ち合わせしてる」

[あー…もしかして今回の件で色々あったとかですか?]

「動けない神から「そっちでちょっと休ませてくれない?」って連絡に対して「とっとと神界に帰れ!」って言い合ってたけど、埒が明かないから強制送還してくるって」

 なんというコレジャナイ感。

[その神様、割と余裕ありそうですね!]

「消滅はないけど、休眠二歩手前ってところかな?」

 割とやばかった!?

「まあ、そういった輩は消滅以外はかすり傷とか言いながらいざマズくなったら早く助けろと大騒ぎするんだよ」

 どこにでも似たようなのは居るなぁ…

「そう言った手合いは自分が安全なところに居たらこっちに散々口出ししてきて「じゃあお前がやれ。迎え寄越すから」って言うと、「それは私の仕事ではない」って言うんだよね」

[せお姉様ストレス溜まってるなぁ…いい子いい子する?膝枕しながら]

「… … …これ片付けてから」

 顔を真っ赤にして呟くように言うせお姉様が綺麗で可愛い。


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