30話 TS化した僕は首をかしげる
お茶を三人の前に出して僕はミツルギ姉様の斜め後ろに移動───
「ここ」
ミツルギ姉様が隣の椅子を引いて座るよう指示された。
[僕いるの?]
「「いる」」
姉様と巽さんの二人が同時に言った。
テーブルの上には職業取得時に得られる加護及び機能一覧というタイトルのペーパーが置かれていた。
箇条書きで書かれているそのナンバリング前にチェックボックスがある。
「そこにある項目のうち、分かっているモノにチェックを入れてください」
[お二人は記入終わりましたか?]
「ええ。後は姫のみです」
代表で巽さんが答えてくれたので僕は用紙に目を落とす。
これは、知らない。こっちは教えてもらった。これは───
さっとチェックしながら読み進めていくと、だいたい7割にチェックがついた。
[プライベートボックス機能って知らなかったんですけど!?]
「…姫。それだけ分かっている者はほぼ居ないかと思います」
「まさか半分以下…」
目の前にある機能に何があるか掘り下げて考えているだけなんですけどね…プライベートボックスは分かりませんでしたし。
「職業についての講習以前に基礎講習が必要ですね」
落ち込む巽さんの従姉妹さんをスルーする巽さんは、どうやら今後のプランを考えているようだ。
[でも、こんなに理解度に差があるって言うのもおかしい気がするんですけどね]
僕はミツルギ姉様を見る。
ジッと見る。
「私は何もしていないぞ!?」
慌てるミツルギ姉様。
「僕知ってるよ!」
と、今まで黙ってテレビを見ていたせお姉様が反応した。
「祓戸の大神様。何か仕組みがあるという事でしょうか」
「!?」
普通に直球で聞く巽さんに対して「そんなに普通対応で大丈夫なのかコイツ!」って顔で巽さんを見る従姉妹殿。
「思考フィルターだよ。ちゃんと考えて確認すれば8割は理解できる」
あ、直感型の天敵システムじゃないですか!
「安全装置と言って欲しいな。何となくで十全にできる一名がいた場合、大多数が「コイツ以外できない」と思い込み、祝福やスキルについて目の前にある事以上のものを確認しなくなった過去から追加されたモノだからな」
「でもこの世界の人達は結構止まっているよね」
「研究している奴も一部居るようだが、ここまで理解できていないのは異常だ。恐らく世界的な思考誘導でもあるのか…」
せお姉様の言葉にミツルギ姉様が少し険しい顔で考える。
「ダンジョンシステムと思って深く考えていない可能性もあります」
「思考停止は怠惰と同義だ」
「だね~」
ですよね~
従姉妹殿の台詞をバッサリ斬り捨てる二神。
うん。僕もそう思うからそこはもうちょっと考えようよと突っ込むと思うよ。
大体七割しか分かりませんでしたが!
「なんの工夫も努力もなくスキルの恩恵だけ受け続けた場合、職業摩耗を起こす。
工夫や努力をしながらスキルを使い続けていた場合は職業進化を起こす。この世界の者達はレベルアップによる職業進化とスキルだよりで使いすぎによる職業摩耗を起こすと思っているようだが…まあ、当たらずといえども遠からず、だな」
[レベル記載がないからレベル概念はないものと仮定して今あるスキルで何かできないか考えながらやっていた結果が祈りでした]
「うちの妹が純粋すぎる件について」
「姫は純粋で可愛くて綺麗ですから!」
「分かるぅ~」
「………」
[あの、従姉妹殿。巽さんはこういう人です。大変申し訳ありませんが、何故が僕が絡む件に関しては狂信者モードになるので…神を神とも思っていないかと]
表情だけで「うっそだろおい!」って器用だな!
あ、神圧で喋るのもキツいんですね。慣れてください。
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