601話 演奏できる事実と、新たな罪と


「はい。配信を始めます」


『待ってた』

『待ってた』

『あと2分待って欲し』

『巫女様キター!』

『待て何があったw』


「えっと、今回はヴァイオリンを送られてきたので練習というか、触りを教わろうと思います」

 そう言いながら隣のスタジオへ移動し…

「……うん。新たなテロかな?」

 ピアノやヴァイオリンだけならまだしも、和琴、そう、龍笛、しょうあとは笛と見慣れない物が2~3点置かれていた。


『楽器多いな!?』

『待って?全部恐ろしく高そうなんだが?』

『琴って数十万から百万単位だったんじゃないか?』

『雅楽器も高いぞ』

『なんでバグパイプあるのさw』

『えー?』


「お高いって…」

「そこは父のワガママ代ね。ポケットマネーだから気にしないで。更に言えば本人が買ってきたし」

「「えー?」」

「あ、因みにこのヴァイオリンは私の私物ね」

「……うん。なんか見るからにお高そうなモノだよね!?」

「そこまでではないのよ?日本製だし。130万くらいね」

「兄さん兄さん。130万円だって…兄さんのフルコース料理何回分?」

「いやその場に僕を引っ張り出すの止めてくれないかなぁ!?」

「フルコースなら1回分ね!」

「静留さぁぁぁん!?」

「材料費だけで200万円までなら出すわ!」

「今夜のお夕飯はワイバーンカツとかなのですよ」

「ワイバーン!?」

「ちょ!?兄さんあれワイバーンだったの!?」

「うん。ワイバーンの当たりフレーバー」

「いや、当たりフレーバーって何よ…」

「外れがもの凄いんだよ…聞かないで欲しい…」

「「あっ、はい」」


『巫女様の瞳からハイライトさんが家出した!?』

『余程の物があったんだろうね』

『もしくは毒物判定』

『料理神な巫女様やぞ?毒でも美味しければ毒抜きして調理するだろ』

『おまいらの巫女様へのその信頼感はは何なの?』

『料理の鉄人ロクさんへの信頼感レベル』

『巫女様が『ココのお店、星一つ』って言ったらどれだけ有名店でも拒否する』

『信者が怖い』

『信者ではないが巫女様の料理に対しては絶対的に信頼している』

『別のベクトルの信者がいたァ!?』


「静留さん、ちょっとピアノ弾いてみても?」

「うん。どうぞ~」

「これ、静留さん家にあった物だよね?」

「そそ。奥の練習室にあった物だよ」

 軽く弾いてみる。

「指が忘れかけている…」

「いや、何で初めて弾く曲がG〇t W〇ldなの?」

「ゲワイが何となく浮かんだから」

「兄さん兄さん!88鍵〇酷使録やって!」

 目をキラキラさせて言う妹者。巫山戯んな。

「無茶言わないで!?僕どちらかというと弾けるのクラシックかジャズ系だよ!?」

「いやそれこそ何でできるの!?」

「学祭で演奏することになったからって半月頑張って17曲覚えた」

「何という技術の無駄使いッッ!」

 頭を抱える佑那の横で真剣な表情の静留さん。

「それもしかして、大学の学祭?」

「はい。大学の時の…です」

「仮面付けて、タキシード姿の?」

「?はい」

 あれ?もしかして、知ってるのかな?

「胸、詰め物してた?」

「…………はい」

 うわ、そこまでバレてる!?

 顔や性別を知られたくなくてそうしたけど…うあああ…バレてた!?

「音楽業界が一時騒然となっていたのよ?「マゼッパ」や「ラ・カンパネラ」ジャズを平然とノーミスで2時間弾き続ける鬼才の一般大学生がいるって」

「?」

 ちょっと、何言ってるのか分かんない。

「いやいや、あの程度なら結構な人ができますよね?」

「楽譜無しのノーミスで2時間?無茶言わないで?」

「だって動画で見たとおりに再現しただけだよ?音は覚えているし、タッチも覚えている。あとは作曲した人の曲に籠めた想いを引き出せれば…うん」

「「いや、それが無理だから」」

「香也は練習無しで弾いてたよ?ゲームミュージックだけど」

 格闘ゲームのサントラのクラシック版を耳コピで再現してたんだよなぁ…

「兄さん…比較対象が特異点オタクの時点でダメダメだよ…」

「あの子は絶対別の所で死ぬほど努力してたと思うわ」

「えっ?…じゃあ「音のみで打鍵の強さや足運びも全て分かる。俺も出来たからイケルイケル」って…嘘?」

「嘘ではないかも知れないけれど、それを言うまでにかなり膨大な練習をしていたと思うわ」

「また重要な所を態と省いて勘違いさせたんだ…」

「あー…………ギルティ」

 アイツは許さん。僕の半月返せ。


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