567話 予防策と、次善策
「一番の問題は位階。魂の器や処理能力に関してはどうとでもなる」
「ならないからこうして言っているんだけど!?」
ユルフテラ様が少し感情的になっている。
「友紀も含め冷静になれ。友紀、泣いてるぞ?」
えっ?
「あ…」
兄さんが死ぬかもなんて聞いて、動揺して気付かなかったけど、涙が出ていた。
「器問題に関しては確かにかなりの負担にはなる。これに関しては魂に直接ダメージが来るために外殻バックアップ…残機も気休めにもならない。
ただ、幸いな事に現在この世界は処理がかなり軽い。だからマイヤ1人でも管理できていたんだ。友紀に負担が掛かっていないのがその証左だな」
言われて気付く。
箱庭の負担って、もしかして全部マイヤに?
「高濃度のエネルギーと神気、そして軽いデータコード。多少広がってはいるが実質マイヤ1人でも処理は出来る。そこにリムネーが加わり、更に分散されている。
現在管理権限者不在状態なのに問題無く動いているからわかるだろう?」
ユルフテラ様とミツルギ姉様が頷く。が、納得はしていないようだ。
「処理のダメージは無い。器の問題だが…これに関しても上位世界神…上位世界の中級神、オムスが開発した伝承システムの事は知っているか?」
兄さんに問われ、ユルフテラ様が「世界継承システムのことだよね?」とすぐに答える。
せかいけいしょうしすてむ?
首をかしげる僕にユルフテラ様が苦笑する。
「これまで子や部下に自世界を任せたり引退したい神は子や部下へ譲渡する際、かなり煩雑な手続きと命がけの引き継ぎが行われていたんだけど、このシステムのおかげでスムーズな手続きと余程の差が無い限り消滅することが無くなったんだ」
消滅…消滅て…
「尤も、主神引退や死去の際は部下や子達複数で世界を受け継ぐのが普通ですから」
ああ、そもそも使うことはあまりないんだ。
「神にも寿命はある。再誕する神であれば継承する必要は無いが、そうでない場合は複数で別けるか、命がけの引き継ぎをするかだったが、このシステムで一変した」
と言うことはそのシステムを使うって事なのかな?
「更にオムスは考えた「器と処理を外部に任せる方法って無いか?」と」
「それは…!」
あれ?ユルフテラ様の顔色が悪い?
「まあ、その結果が文明崩壊だったが…ただ、一時的に器を外部の物質に一時移植することに成功した物が…『箱』だ」
………は?
「えっ…あの箱万能過ぎない!?と言うよりも神様が作った物なの!?」
「神と人の共同作業…と言うよりも奴が人のフリをして共同で作り上げたらしい。万能過ぎるが、馬鹿みたいに神気を消費したために結果ヤレケンソス朝が滅んだ」
「いや、でもそれは…実際に、出来たのか?」
「本人が言うには出来た」
「会ったのか!?何処にいるんだ!?かの機構神が姿を眩ませ数千年、技術の進歩は既に頭打ち…かの機構神のようなブレイクスルーがいないとそろそろ古典派が…」
「普通に技術者として趣味に生きているぞ?」
………ん?
「兄さん、もしかしてだけど…超絶マッドな技術者ってその神様?」
「ああ。覚えていたのか」
「と言うことは…兄さん、もしかして、布教活動した?」
「布教活動?」
「マンガやゲーム、アニメを渡したり」
「?ああ。むしろ最近はその類をせがまれて仕方ないな」
「「交流している!?」」
ユルフテラ様とミツルギ姉様が驚愕の表情で叫んだ。
「箱に関しては奴に一度チェックしてもらっている。機能追加や補強もバッチリだ」
「でも、僕が鑑定した時にはそんな機能付いてなかったよ!?」
「あの箱はアタッチメント追加タイプだぞ?でなきゃあんな形はしないだろ…この前90年代のアニメDVDボックスをいくつか持っていった時に今言った物のアタッチメント含めいくつか対価で貰った」
僕は慌てて外に出て箱を再鑑定する。
【箱】上界遺物:ヤレケンソス朝時代の軍用物資保管箱。
設置をすれば半径10キロをテリトリーとし、害意サーチをし、防衛結界・迎
撃結界・緊急迎撃機甲兵を展開する。
容量は重量計算で95892トグベ(43100トン)。使用率11%
現在魔力100%、予備魔力820%(最大4200%)、緊急迎撃機甲兵57体待機。
アタッチメントA・E・T・Fセット済み(秘匿。以下閲覧者のみ表示)
A:保護機構強化:防御結界拡張及び緊急迎撃機甲兵の予備機収納と軽修理。
E:防御強化:範囲内所有者の物理・アレム(霊体)・魂の守りを強化。
T:接続保護(98%完了):所有者の通信ライン、世界情報接続をアシスト保護。
F:容量保護:外部容量拡張保護および所有者スペースへの転送(未登録)
……なんか、たくさんふえてるぅ…
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