728話 終着なき物語


 龍神神社に到着した僕たちは龍田比売様から境内の使用許可をもらった。

「世界そのものが貴方のものでは?」

 と言われたけれど、それはそれこれはこれ。

「巫女にゃんこ奉納歌を3人でやるので使いたいんです」

 ガタガタガタタンッ

 なんか凄い音がした!?


 ジャンヌさんが機材のセットをしている間にマイヤとリムネーに説明をする。

 今回は皆で踊りを楽しむ。

 まずはただそれだけ。

 おうたは踊ったあとに皆で歌おう。

 マイヤとリムネーが『『はい!』』と良いお返事。

 そしてマイヤがリムネーに踊りを教え始めた。

 僕は…折角楽器も沢山あるんだし、和楽的な感じでアレンジを…

「編集用のPCも準備万端です!」

 ……ジャンヌさんがお高そうなマイクを構え、更にはその側に配信用のカメラが浮いている。

「えっとぉ?」

「ご安心を!だいたいこの子が調整するらしいので一通り奏でていただければ」

 流石神様特製のカメラ…万能過ぎる。

 とりあえず、ピアノと和琴でベースを作ってそうなどを使い所々アクセントをつける。

 あ、序でにサビの部分はヴァイオリン入れようかな。

 そうやって繰り返すこと1時間。漸く出来上がった。

 40分辺りでマイヤ達がカメラに映らない所で曲に乗っていて可愛かった。

「さあ、お待たせ。それじゃあ皆で踊ろうか」

 僕はちょっと昔の僕の姿になり…あれ?リムネーの笑顔が凄く弾けてません?

『お父様が可愛すぎて愛おしすぎて色々ボロボロですっ!』

 何がボロボロなの!?



 母巫女にゃんこが踊る。

 それを見ながら巫女にゃんこと巫女子にゃんこが踊る。

 巫女にゃんこは真剣に。

 巫女子にゃんこは時々舞い落ちる木の葉に気を取られながら。

 それを見て笑みを深める母巫女にゃんこ。

 突如風が吹き、母巫女にゃんこと巫女子にゃんこが姿を消す。

 しかし巫女にゃんこは踊り続ける。

 留まることなく、淀むことなく、ただ教わったとおりに。

 踊っている中三度突風が吹く。

 桜、紅葉、雪…そして再び桜が風に吹雪いて天へと巻き上がる。

 新緑の中、母巫女にゃんこと巫女子にゃんこが本殿前に立ち巫女にゃんこを笑顔で見ている。

 そして曲が終わり深々と一礼した巫女にゃんこは2人の元へと駆けていった。


「映像だけだとどうなのか分からないですぅぅぅっ!」

「もにょもにょするぅぅぅっ!」

 ジャンヌさんと龍田比売様がほぼ同時に吠えた。

「せめて、せめてハッピーエンドだとっ!」

「メリーバッドエンドは勘弁願うのじゃ!」

「はい、次はおうたですよー。今の踊りから心の声を出してみよう」

『『おー!』』

 2人とも、ノリノリである。

 だからこそ幸せであるようにという願いを込めて言葉を紡ぐ。

 曲が流れ、リムネーが歌い、マイヤと僕が続く。

 サビの部分以降最後の手前までは僕が色々押し込めた気持ちで歌い、最後は皆で歌った。

「───うん。マイヤもリムネーも上手上手」

 2人はニコニコしながら手を繋いでいる。

「序でにもう一曲おうた歌おっか」

『『!!』』

 2人はニパァッと笑顔になって何を歌おうか話し始めた。

 この子達とカラオケ行きたい。最低でも20時間は聞いていられる自信しかない。

 この後カメラが編集を終えるまで4曲ほど3人で歌ったけど、幸せで一杯だった。


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