816話 強く吐けない者達
SIDE:首相官邸
「……この胃のムカつきと吐血後に激甘カフェで回復…ストレスで胃がやられてもすぐ復活出来るってスゲぇな」
「そこまで疲労困憊な挙げ句ストレスを抱えている浅野さんが怖いですよ」
「二徹でも三徹でも無理出来るが、国民の悪意と欲はなぁ…党内はまとめきれたがあとは野党と県連の連中か…」
ため息を吐きながら穏茶nextをちびりと飲む浅野。
老い先短い議員らは神々の存在以上に閻魔王の存在を知り死後を恐れ巫女案件に関して絶対口出しはせず、何か善行を積もうと躍起になっていた。
反対に若手議員の一部は巫女を取り込めないかと裏で動き回っていたのを浅野が潰して回っていた。
「しかし中堅にも阿呆が居たのは参った」
「金と権力でしかない連中ですから」
「ハッ、言うようになったな」
「アレが片っ端から殴って回っていますからね…」
アレこと磯部大臣は現在、綱紀粛正断行のため天下御免で問題議員や未申請デモを正面から突撃し、論破や論破(物理)のため走り回っている。
「なんだ、また殴られたのか?」
「ええ…返事はYesかNoにしろと…物申しに来ていた野党議員諸共殴られました」
浅野が顔を引きつらせる。
「マジであれ、警察だったんだろ?良く捕まらなかったな…」
「岩崎案件の詳細を全部調べましたが…知ってました?大田区周辺から横浜辺りまで数年前まで暗黒街も斯くやという状態だったというのは」
「───ああ。カジノ構想ぶち上げた際に東南アジアや中東のその手の連中が入り込んできた事は知っている」
「人身売買組織や臓器売買組織、呪術組織や暗殺組織等々映画の世界じゃないかというレベルだったらしいですが、岩崎長兄がほぼ全て壊滅させた際にアレの部隊員達は週一ペースでドンパチやったり時には化け物や神々と出会していたそうです」
「馬鹿な…そこまでの情報は」
「報告しようがないでしょう…なのでそういったトンデモ案件は全て岩崎案件と一括りにして処理していた…と言うのは実体らしいです」
「岩崎長兄だけでなく連中のトンデモ案件も入っていると…無茶苦茶だな。だが、当時の俺らはそれ以上に無能だったわけだ」
「…ええ。事が起きてからしか対応出来ず、起きていても本当に大事にならない限りは見て見ぬ振りで流す…ただ、どうしても解せないんです」
「何がだ?」
「いつから我々はそんな人間に成り下がったのかです」
「……そう、だな。いや、そんな狂った倫理観はないはずだ。そんな組織が少しでも現れれば世論は騒ぎ俺らも国をあげて撲滅に走る。
何せ人身売買や臓器売買組織なんてデカイ山、俺らだって見逃すはずが…!?」
「気付きましたか?」
「あのくそ爺共か!死んで十数年経つが、国賊が死ぬ前に俺ら全員に…!」
浅野は力任せにテーブルを殴りつけた。
「───オメェ、いつ気付いた?」
ギロリと磯部を睨み浅野はドスの利いた声をだす。
「一昨日ですよ。調べごとをしていたら不意に…恐らく呪いか術だったのだろうと思います。
それらは巫女様との対談時辺りには解けていたと思いますが、掛けられたのが昔だったせいで狂った事実自体思い出せなくなっていたんでしょうね」
「犯人らは全員土の中、そして俺らは被害者兼加害者と…最悪じゃねぇか」
「私達が直接関わっていないのは確かですが、手出し出来ないようになっていたのも事実です…」
「クソが!」
苛立ちを隠しきれずにテーブルを再度殴り、磯部を見る。
「この件は───」
「動いてもらっていますよ。しがらみのない頼れる甥に」
「それで殴られたのか」
「…ええ、野党議員もその場でアレのチームに解呪を掛けられた後、その事を問われた瞬間に思いだしたのか、泣き崩れていましたよ…」
「やるせねぇな…ただ、アレが居なかったらと思うと、ゾッとするな」
「全くです。我が甥も、巫女様方も…居なかったらと思うとゾッとします」
椅子の背もたれに体を預け、互いに深いため息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます