920話 ヤンデレ束縛系地雷妻は好きですか?(+浪費癖あり)


「岩崎!?」

「姫様!?」

 あっ、課長と巽さんが来た。

「巽さん起きたんだ」

「緊急事態とたたき起こされました!何ですかこれは!?」

「ダンジョンに変質しようとしているのを食い破っている最中」

「「えっ?」」

「掌握までもう少し掛かるから僕の真後ろにいないと圧が掛かるよ」

 僕は戸棚から神祇結晶を取り出して、力を籠める。

 蒼黒の空間が白銀の帯に包まれ、ジジジと悲鳴をあげていたけど、僕が神祇結晶の力を使った瞬間にバシュンというタイヤがパンクしたのかというような音と共に空間自体が霧散した。

「は…えっ?ダンジョンが、消えた!?」

「何が…ええっ?」

 目の前で起きた出来事がキャパシティーオーバーだったのか、課長達が固まってしまった。

「ちょ!巫女様がやらかしたぞ!」

「マジか!ダンジョン潰したって!?巫女様がガッてやったらダンジョンが消えたって伝説一覧に書かないと!」

「部隊突入準備だ!課長!指示を!」

 あっ、強行班の人達来てたんだ。

「岩崎、突入しても問題は無いか?」

「はい。中和して界を壊したので大丈夫です」

 僕が頷くと課長と巽さん、強行班のみんなが中へと突入した。



「…周辺に人頭大の魔石等が落ちているだけで被害は無いようです。念のため会場のスタッフと共に回りましたが問題無いとのことです」

「魔石はどうした?」

「自分が回収しています」

「それは全て岩崎の物だからな?」

「勿論です!」

 いや要らないんだけど…あー、問題にならない程度浄化して静留さんにあげよう。

 魔石を受け取り戸棚へと収納する。

 何かシューシュー言っているけど気のせい!

「では!自分たちはこれで!ライブ楽しみにしているからね!」

 そう言って強行班の人達は帰っていった。

 課長と巽さんを残して。

「ええっと?」

「課長と私はこれで上がりです」

「なのでのんびり時間を潰そうと思ってね」

「ですのでリハーサルから見学が可能です!」

「!?そうだな!」

 えー?

「リハーサルから見たら感動が無くなるのでは?」

「それはないな」

「それはありえませんね」

 何で断言するかなぁ…

「リハーサルは11時か「あーっ!?態々無理して用意したセットが無くなってる!?友紀駄目じゃないかぁ…君の一世一代の大舞台なんだから神々しい感じでやらないと。ちゃんとパパらしく頑張ったのになぁ…」…は?」

 今、懐かしくも、とても聞きたくない声が聞こえたよ?

 声のした方をゆっくりと見る。

 そこには僕に似た顔立ちの青年が立っていた。

 あの時の、姿を消したときのままの姿で。

 間違いない。

 僕の、僕たちの父親だ。

「……今更父親面ですか?」

「えっ?パパだよ?あー…確かに僕があんなアーティファクトに取り込まれちゃって行方不明になったのは謝るけど、かなりのお金を結羽人に渡していたはずだよ?大丈夫だったでしょ?」

 首をかしげるソイツにため息を吐く。

「貴方がいなくなった後すぐに貴方の奥さんに盗まれそうになった所を兄さんが”二度と僕たちと関わらない”という誓約書にサインさせた上で通帳を渡したそうです。以降僕らは兄さんが用意したお金で生活していました」

「は?えっ?ちょっと待って?えっ?じゃあ結羽人が2人の親代わりをずっと!?」

「ええ。ですから貴方に親を名乗って欲しくはないのですよ」

「いやそれ知らなかったし!?あの人そこまでするかぁ…僕の事好きすぎて色々しでかしてたけどさぁ…ああもうっ!」

 なんか、頭抱えているんですけど?

「ヤンデレ束縛系地雷お嬢様に捕まった時点でお察しだけどさぁ…育児しようとしたら「私よりアレが良いの!?」ってククリ振り回して騒ぐから何も出来なかっただけなんだけど…

 仕事の途中に寄ってご飯作ったり、こっそり生活費と養育費をATM経由で振り込むのが精一杯だったんだよぉ…」

 んんんんっっ!?

 まさかの不憫枠!?いや待て騙されるな!色々しでかしている輩だぞ!?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る