697話 誰もが巫女様を信じてる


「兄さん。反省してますか?」

「いや、すぐに分かっただろう?」

 配信を終えたあと、スタジオに兄さんを呼び出した。

「分かっていても、です!」

 兄さんは僕が何故怒っているのか分かってないんだけど…

 あと、ゆる姉様とミツルギ姉様がジッと兄様を見ている。

 あとで兄さんは昭和から平成までの全変身ポーズの刑に処そうかな?

 可哀相だから30作品くらいで良いかな?


「で、アレは何だったの?」

「あれは滅んだ下位上級世界に棲息していたとされる『棲魔・アドー』だ」

 どうやらあの植物群は群体で1つ。1つで群体らしい。あと、液体は対象を何でも溶かすらしい。

「アドー…と言うのはコメント欄に書き込みをしたりできるの?」

「あるのは無限の食欲のみだが、取り込んだ相手に擬態し、声を掛けたり呼び寄せる事もあったとされるから、恐らくは捕食した人間の脳を使いあの部屋の中のモノを使いこなしていたんだろう」

 なにそれ怖い。


「隣の部屋があっただろ?あの真っ黒な空間」

「うん。あれ、何?」

「何度か見た事があるが、ダンジョン勢の世界への中継通路だ」

「「「はぁっ!?」」」

 いやなんでそんな貴重な空間を斬ったの!?

「あの中に入れば全てがデータになる。が、敵性エネルギープログラムに関しては防御膜のみで無防備だからな…空間切除前にダメージをぶち込んだ」

「もしかして、あの式神?が投げた剣?」

「ああ。ベースは神気結晶だ。アレの欠片に幾つかの術式をプログラム状に組み、それをぶち込んだ」

「叩き斬ったんじゃ無いの?」

 ゆる姉様が聞いたが、

「いや、斬らずに切っ先でたたき込み、中に入ったのを確認して爆発がこちらに来る前に空間を叩き斬った」

「「………」」

 アカン…ゆる姉様とミツルギ姉様が虚無顔だ…

「サーベルって引き切りじゃ無くて叩き斬るタイプだよね?」

「引いても斬れるぞ?」

 兄さん、そう言う意味じゃ無くてね?…まあ、いいや。

「…で、相手側にどれだけダメージを与えられたのかなぁ」

 兄さんは少し考え、

「多少の嫌がらせレベルだと思うが、爆発よりもプログラム状の術式が何処まできいているかだなぁ…いや、箱庭系の破壊力は凄いからな…かなりダメージを与えているかも知れない」

 何で?

「まあ、うん凄いだろうな」

 ミツルギ姉様が遠い目で呟く。

「まあ、ゆーちゃん関連品はねぇ…」

 ゆる姉様もミツルギ姉様とまったく同じ目で呟いた。

 酷い言いようだと思う。

「まあ、本部に連れて行った奴が居るだろ?彼女に聞くことにするよ」

「彼女に聞いたら分かるの?」

「ああ。俺に対しては素直だし、お前の信者だしなぁ」

 信者て…信者て…

「「…うん。巫女様だから仕方ない」」

「お二方に巫女”様”って言われたくないんですけどぉぉ!?」

 僕の魂の叫びは全員にスルーされた。

「兄さん?ねえ、兄さん?」

「…………ごめんなさい」

「「ごめんなさい」」

 いや、謝って欲しいわけじゃないんだ。

 あと、

「何を謝っているんですか?ねえ、僕分からないんです。教えていただいても?」

「「いや、あの…ごめんなさい」」

 うん。だからなんで謝るのかなぁ?僕分かんないや。


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