791話 やだ、うちの家の水…毒!?


「水…水とは…」

 ブツブツ呟きながら運転をする巽さん。

「いや本当に水だからね?」

「普通の水はそんな神々しくありませんし、ペットボトル越しに神威を放ちません」

「とてもまろやかで美味しいのに…」

 入れたときと同じ冷たさをキープした水はとても美味しかった。


「さっきのはなんでしょうね」

 マンションの駐車場に入り巽さんがポツリと呟く。

「女性とも男性とも、ただ金属のすれたような声で僕を呼ぶ…悪魔の声だったね」

「えっ?綺麗な女性の声でしたけど」

「……ああ、意識に語りかける類だったんだね。アレは」

「え…っ」

 思考がクリアになっていったのだろう。段々顔が青ざめていった。

「巽さん。佑那と一緒にジムの『精神修行カリキュラム』受けた方が良いかも…まずは易モードで」

「……はい。今日はそのままジムへ向かいます」

 ああ、項垂れちゃった…

「ではアレはダンジョン側の…」

「こちらの姿を見てすぐに「友k」と呼んだとしたらうちの駄目親じゃないです」

「駄目親…」

「もしアレが父なら「アレ?結羽人?目つきが優しくなって…あ、彼女出来た?」と自分がしでかしたこと一切忘れたような寝言ほざきます。間違いなく」

「うわぁ…」

 あのポヤヤンはこのレベルのことを言う。絶対に。

 だからアレは別のナニカだと思う。

 まあ撃退したわけだし、今は考えないでおこう。

 マンションに入ると、早速改装されていた。

「堂々と食堂オープンさせてるぅ…あっ、売店も……えっ?売店お客さん多くね?」

 慌てて売店に入ると、神阿多都比売様と石長比売様が一生懸命お客さんを捌いていたが…補充が全然できていなかった。

「………補充の手伝いしよう」

 店内にソッと入りササッといくつか商品を補充し、すぐに逃げた。

 そんなにアイテム数は多くなかったけど…お弁当やドリンク、お札、ステッカーとか、あとお煎餅とか……

 いやあのね?伊邪那美お母さんのお煎餅って売られていたんですが、アレ…黄泉竈食ひにならない?大丈夫?



 神域に入るとグッタリしているゆる姉様とミツルギ姉様がいた。

「お疲れ様です」

 元の姿に戻って声を掛ける。

「「……」」

 お二方共にのろのろと顔を上げ、また突っ伏した。

「私達の苦労って、なんだったんだろうね…」

「…今言うなよ…疲れが、増す」

 いや本当にどうしたのかな!?

「ゆーちゃん…私の世界、ゆーちゃんに占拠されちゃった」

「同じく」

「いやどういう事ですか!?」

「あの水タンクを近場の水源に入れて、世界に循環させたらダンジョンが自然消滅したの」

 なんて?

「それを聞いて手頃な水源に同じ事したら半日で水源から半径100キロ内の全ての生き物が強い聖属性を持ち、それが今もどんどん広がっているんだ」

 いや、両方とも意味が分かりませんが?

 これ、僕のせい?

 特にゆる姉様のところは無くなっただけだよね?占拠って…

「ダンジョンなくなったのは良いけど、みんな「巫女神様の波動を感じる!」とか言い出すし…」

「いやそれホント僕のせいなの!?違うよね!?」

 絶対違うよね!?あと僕の波動って何!?


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