169話 出発~前に早々トラブル発生…?

「岩崎くん。改めてですが、個人情報漏洩及び協会の数々の不義理。申し訳ありませんでした」

 協会の出入り口で出会い頭深々と頭を下げてきたのは探索部のトップである長谷川部長だった。

[いえ。部長にはずっと便宜を図ってもらっていた事は知っていますし…あの時も悔しそうな顔をしていたのは分かっていましたし…会長の不正の証拠を準備していたのも部長ですよね?]

「…トドメにしか使えなかったですが…」

[あああっ!落ち込まないでください!]

「岩崎、放っておけ。部長は撫でて欲しいだけだ」

 えっ?

「そんな事は無いですよ?」

 ───だけ、ではない。と。

[そういえば、巽さんは?]

「あー…慌てて電話しに出たきりだな…車が来たが…ああ、来たぞ」

「……拙い事になりました」

「どうした?」

「先方の許可が下りません。柵の強制突破になりそうです」

「何の話をしているの?」

「とりあえず、乗るぞ。車の中で詳しい話を聞こう」

 と言うわけで僕達4人は車に乗り込んだ。



「で?どういうことだ?」

「───巽家は大政奉還以降関東を魑魅魍魎から陛下を守る家として。また、本家と関東地域に古来よりいた退魔・神道系の方々との橋渡し役として存在しています」

「…で?」

「その際に本家より名割の儀…要は区割りによるのれん分けのようなものを受けたのです。

 そのため、巽家は無断で逢坂の関を越えることは禁じられており、また本家も同じように越えることは出来ません。

 事情があって越える場合は事前に連絡をし、越境流水の儀を行った上で移動するのです」

「「何それめんどくさ」」

[あの、それって関東関西で?]

「いえ、本家かそれ以外かのみなのでだいたい天下…五畿内ですね」

「京都、大阪、奈良、兵庫辺りか」

「はい。その地を踏む際はさっき話した越境流水の儀を行わなければならないのです。ただ、例外として本家当主の葬儀や本家よりの緊急の呼び出しは当主許可証もしくは従一位以上の人物の発行した許可証によって赦されます。ただ、奈良に関してはやりようがあったのですが…」

「呪術的な物だとは思うけど、従一位の許可証とか俗物的すぎない?」

「面倒くさすぎて泣ける」

 ───部課長コンビに大不評な件について。管理職がそれいちゃいけない気がする…

[でも、それ破った場合は?]

「守護獣に襲われます。敵対した扱いです」

「「ぇえー……?」」

「しがらみとはよく言ったものです…」

 行政も民間もそうだけど、緊急の出張って割とあるのに…今日の今日はそこまでだと思うけど…

[………巽さん巽さん]

「姫様。何でしょうか」

[従一位以上の権力者ですよね?]

「はい」

[お母さんは?]

「……えっ?」

[伊邪那美お母さん]

「………規格外どころの話では無いですよね?その許可証ってある意味殺しのライセンスですよ?」

[でも問題無いですよね?]

「これが駄目なら神に喧嘩を売った形になると思いますので大丈夫かと」

【母:我が子のためです。一筆書きますとも。ええ。力を籠めて】

[…ご免なさい巽さん。何か、凄いモノがくるかも知れません]

「えっ?」

[伊邪那美お母さん、張り切って力を籠めて一筆書くって]

「胃が…胃が痛い…っ!」

「「…うわぁ…」」

[でも、そうなると、許可証を見せるまでも無く神威マシマシ書簡だから分からないかな?]

「分からなかったら本家が終わりますね。表から姿を消して千年以上歴史のある家が潰えるのか…」

 まだ駄目になったわけじゃないですからね!?


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