1014話 邪神様漫遊記(先代巫女の悪口絶対許さないウーマン)②


 兄さん姉さん、事件です。

「巫女様には色々無理難題押しつけて申し訳なかったねぇ…ほら、これも持って行って頂戴!」

「国際会議見てたら俺ら泣けてきたよ…政府に言いたいことは色々あるが、一番まともな国だという事は分かったし、魔物達に対しての手段が限られていることも…負担が凄かったんだな…お前の兄さんにこれやってくれ!」

「いままでありがとなって伝えてくれ!あとこれはうちからのプレゼントだ!」

「おおう…邪神様かい!?前にうちから菓子買った。また来てくれたのか!嬉しいねぇ…神様来店記念だ!全品更に10%引きだよ!」

 わいのわいのとお年寄り達やおじさんおばさん、お店の人まで…凄い勢いで物をくれるんですけどぉ!?しかも色々安くするし!

「ええい!私も買って買って買いまくります!」

「こうして佑那はアメ横店員達の術中に嵌まり散財をするのであった。後半へ続く」

 この駄メイドはっ!


 お菓子や調味料、珍しい食材などを購入しそろそろ来るであろうタクシーの方へと進む。と、

 チャラい集団がスマホ片手に「居た居た!」と言いながらやってきた。

 瞬間、ハヴァスターイ様から凄まじい殺気が彼等目掛けて放たれる。

 余波は無く見事にその集団だけに浴びせたようで、胸を押さえて泡吹いて倒れて…うわ、漏らしてる人もいる。

「おーう…この人達何なんでしょう?何か知っている方いますかー?」

 ジャンヌさんが手を挙げて周りに確認を取る。

 私は周りを見回していると、

「あの、その人達ネットワークA・Oって配信者グループで、今ライブ配信やっているみたいです」

 スマホ弄っていた女性がそう教えてくれた。

「あ、そうなんですね!ありがとうございます!」

 ジャンヌさんのコミュ力ぅ…

 なんて思いながらも素早く確認をすると…へぇ。

「どうやら先代巫女様の闇を暴くって言う配信らしいよ」

 私がそう言った途端にハヴァスターイ様が反応した。

「つまりは悪意を向けているという事、だよね?処罰対象という事」

 あっ、これはマズイ!

 このままだと何も知らずにとりあえず配信を見てた人にまで被害が…

「ちょーーっと落ち着きませんか!?何も知らずに見ていた人もいると思うので…」

「大丈夫。この者達と悪意を持って配信を見ていた愚者だけに…悪夢の刻印を」

 ハヴァスターイ様はそう言って空に手を翳す。

 すると数万の矢が掌から飛び立って行き、うち数本が泡吹いて倒れているチャラい集団に突き刺さり…消えた。

 ただ、額に黒い文様が刺青のように刻印されている。

「これはどういったモノですか?」

「…寝ると眷属達に追われる夢を見る」

「それだけ?」

「それだけ。でも、全員邪神」

 タイムさんみたいな眷属なら問題無いんじゃあ…

「こんな眷属」

 そう言って虚空に投影された映像は…見るも悍ましくSAN値が直葬されそうな姿をしていた。

「一番マシなのがこれ」

「マシなのでこれ!?」

「精神修行にちょうど良いと思う。因みに捕まったら食べられるし、目が覚めるまで何度でも違う体験出来る。被虐趣味の人でも耐えられないような安心設定」

 あっ、これ絶対衰弱死狙いですわ…ゴメン兄さん。

 何とか説得して刑期を無期から有期刑にして!

 私には無理!

 邪魔だからと路肩や壁に退かされていくチャラい集団を見ながら私は心の中で兄さんに祈った。


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