164話 本気~神回になる!と神が言った。
[はい。今日も、皆を癒やしちゃうぞ☆(ウインク)───と言うわけで、始まりました。うわぁ…コメントに僕の名前が…]
『一番始めに言っていた』
『漢字分からないからゆーきちゃん様で』
[酷いやらかしですね。あれは何も知らない状況での本番でしたからミスの修正が効かないんですよね…今もですが。
どうして皆さんライブがお好きなんでしょう…ん?『生放送、お好きでしょ?』ですか?どこかのお酒のフレーズをパクっちゃ駄目ですよ?]
さて、始まりましたライブ配信。
ブースの外にはゆる姉様、せお姉様が観客としてにやつきながら見ています。
巽さんは撮影班としてブースの中でスタンバイ。
そして相変わらずコメントが爆速で見えない。たまにピックアップされているのを確認するくらい。
『なんか怪しげな宗教と関わっているってマジ?』
『まさかとは思うんですが、あちらさん公式で発表していますよ』
『そちらに神様がいらっしゃるのであり得ないとは思いますけどね!』
[その話聞いて驚いたんですが…更に言うと現在、軟禁されてます]
僕の台詞にコメント欄が『!?』で埋め尽くされる。
[マンション前どころか周辺を囲むように居ます。警察の方々が機動隊呼んでいるみたいです。
まあ、中には入れないようなので安心してます]
一息吐く。
[…今日は中務省さんの所で暴走した企画?版権怖いので歌わないし、運動神経ないので踊らないと言ったらなんだか無茶苦茶なプロジェクト用意されてました。
巫女様に歌って踊ってもらいたいプロジェクトって何ですか!?
しかも登録者数が凄いことになっていましたし…あの可愛い男の子姿でやってくださいってテンプレのように書かれていて困っちゃいましたよ!?]
『時代は男の娘』
『巫女さんも良いけどあの姿に恋してます』
『Cute!』
そういったコメントが一気に流れる。
[僕が変なのかな?皆が変態さんなのかな?僕のこの姿に欲情するなんてよっぽどですよ?]
カメラに向かって流し目をする。
『うっ…』
『 』
『うっ…』
と言ったコメントが大量に流れたので反省してくれたようだ。
[とりあえず今日は戴いた中から頑張って覚えた一曲だけ歌って踊るからね!その間は脇見運転厳禁!片手間作業も厳禁だからね!]
ビシッと指を指して注意する。国外の方も居るだろうし、それくらい言っておかないと…
席を立って扉を潜り、隣のブースへ入る。何もない少し広めの空間。
巽さんがカメラを持って入ってきて…固定台にセットした。
配信は勿論続いている。
[せお姉様…]
「いきます」
声を発し、柏手を打つ。神様は目の前、ガラス?の向こうにベッタリくっついて見ていますけど!
祓戸の社がブースの中に姿を見せる。
鈴が鳴る。鈴が、鳴る。神楽鈴が鳴り響く。
鳥居を潜り、境内へとすすむ。
本殿前の参道中央に舞台が設置されており、僕はその舞台の外に立つ。
履き物を脱いで舞台に立ち、本殿へ一礼。そしてゆる姉様に礼。最後にカメラに礼をする。
鈴の音がゆっくりと小さくなっていく。
それにあわせて舞台の中央へと歩き、中央に着くと曲が流れた。
さあ、戦の始まりだ。
僕は言の葉を曲にあわせて紡ぎ、舞う。
SIDE:祓戸
本殿には僕と伊邪那美様、そして大宜都比売が座していた。
「───お、おお…」
思わず声が出る。
神気が友紀の全身から発せられ、同時に感謝の念が境内を包む。
歌声が、舞が、僕達を癒やしていく。
かなり消費した力が満たされていく。
伊邪那美様をチラリと見───なかったことにし、大宜都比売を見る。
…此方も見なかった方がよかった…
伊邪那美様は鼻血を出しながらカメラ構えているし、大宜都比売は顔を真っ赤にして両手で口を押さえ、声を押し殺しながらもキャーキャーやってるし…
再び彼を見つめ、これが何処まで悪魔憑きに有効なのかを考える。
恐らく今相手は目が離せずにいる。惹き付け、そして最後に放つ。
どこまで効果があるのか。非常に楽しみだ。
僕は望遠一眼レフカメラを構え、彼がクルリと舞う瞬間を狙う作業に集中することにした。
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