943. 竜因子と解決策

 その後、様々な竜に集まってもらい麻薬を焼いてもらった結果、どの竜のブレスでも焼き払うことができました。

 また、ブレスだけではなく、竜魔法でも焼くことができたため、竜の力が加わっているものならばなんとかできるということになるでしょう。

 これは大きな前進ですね!


『スヴェイン、竜の魔法でその麻薬を消すことができることはわかった。あとは治療法を見つけることになるのだろうが、具体的にはどうするのだ?』


「そこが困りどころです。竜魔法にも回復魔法はありますが、それで汚染を除去できるかは未知数です。それに、汚染を除去できたとして人体に害はないのか調べる必要があります。結局、麻薬をなんとかできることがわかっただけとも言えますね」


『それだけでも前進なのだろう? 我々も回復手段まで提供することは難しい。そこは理解してくれ』


「カイザーたちに無理は言いませんよ。それでは、僕は街に戻りジェラルドさんと実験結果を共有します」


『わかった。我は邪竜族の汚染の除去作業に戻ろう』


 僕たちは各々自分の作業に戻っていき、僕はコンソールで待っていたジェラルドさんと結果について話し合いました。

 僕の使える竜魔法の回復魔法でも麻薬を焼却できることを見せましたが、ジェラルドさんの顔は難しいままです。

 やはり、僕と同じ懸念を抱いているようですね。


「スヴェイン殿、これで実際に患者の体内にはびこっているカビを除去した場合、結果はどうなるのだ?」


「はい。結果から察するに、カビは消滅するでしょう。ですが、カビによって破壊されていた細胞までは回復できる保証がありません。神経や脳にもカビが侵食しているでしょうから、カビを除去するだけでは完全な回復は望めないでしょう」


「やはりカビの除去と同時に失われた体の機能を復活させる必要があるか。ポーションで対応はできぬか?」


「神経の修復となると、ハイポーションが必要なんですよ。脳の修復になんてハイポーションでも効くかどうか」


 切断された手足を復元するだけならミドルポーションでもなんとかなります。

 ですが、体内機能として様々な臓器や神経を同時に破壊されていることを考えると、ミドルポーションでは足りず、ハイポーションの出番となります。


 そのハイポーションですら脳の復元ができたという話は聞きません。

 脳を破壊されるということは、通常は死を意味しますからね。


「そうなると、今度の研究課題は竜の力による回復と失われた体内細胞の復活を同時に行う方法か」


「そうなりますね、ジェラルドさん。竜の力による回復魔法は、強力な力を持って再生させる魔法なので細かい調整はできないと思います。神経や脳などは修復できないでしょう」


「まあ、なんの希望もなかった先ほどまでより、大きな前進ではあるがな」


「ですね。がんばりましょう」


 とりあえずの麻薬に対する手段は見つかりました。

 あとは、汚染された人を確実に助ける方法を見つけるだけです。

 こちらも神経をすり減らしそうですががんばるとしましょう。

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