1010. 復興記念パーティ 8
シャニア代表とのあいさつも終わり、僕のあいさつ先もほとんどなくなった……と思っていたんですが、一カ所抜けていました。
シュミット関係者たちです。
何分、生まれ故郷なもので、あいさつという考え方がなかったのかもしれません。
ともかく、そちらに行ってみましょう。
「あら? お兄様、もう出歩いて大丈夫なのですか?」
「無理をしなければ大丈夫ですよ、シャル。それにしても、今日は随分と気合いの入ったドレスですね」
パーティ会場にいたシャルは本当に豪華なドレスを身にまとっていました
これほどのものが作れる職人など……ああ、ひとりいましたか。
「ユイに作っていただいたのです。さすがとしかいえない出来映えですね」
「それはよかった。今日のパーティは楽しめていますか?」
「まあ、それなりには。それにしても、大変ですね。上流階級にも下々の民にも復興したというアピールをしなければならないというのも」
「シャルも覚えておくといいかもしれません。シュミット公国だっていつ襲われるかわかりませんからね」
「もちろんです。しかし、『竜の帝』同士の戦闘ですか。すさまじいものがありましたね」
「あんなもの、数千年に一度あるかどうかのはずなんですよ。『帝』がほかの『帝』と直接対峙すること自体が異常事態なんですから」
本当に、ここ数年で聖竜族は黒竜族と邪竜族のふたつの竜族と決戦をすることになりました。
どちらも『帝』が先陣を切っての戦いだったため、被害が少ないのですが、通常の竜たちが戦っていれば千年単位で癒えない傷となっていたかもしれません。
本当に面倒なことを。
「それで、お兄様。今後の予定はどのようになっているのですか?」
「今後、とは?」
「錬金術士ギルドのギルドマスター移行と学園国家創立です。立派な城壁ができた以上、あとはそれほど時間をかけないのでしょう?」
「うーん。それが、今回の竜災害で資材と人手を持っていかれたため、学園国家内部の建築がストップしているんですよね。立派な城壁ができていても、中身が空では意味がありません。最低限でも人が住めるような環境を整えてからでないと」
「なるほど。それで、ギルドマスターの移行は?」
「そちらもまだまだかかりそうです。僕としては多くを求めるつもりはありません。ですが、あちらは僕から可能な限りすべてのことを学びたいようでして」
「本当に、お兄様の城の勤勉さには頭が下がりますね」
「本当です。もう少し、気楽でもいいのですがね」
本当に気楽でもいいんですがね。
それで止まるようなギルド員たちなら苦労しないんですが。
勤勉なのも困りものです。
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